Rauber Kopsch Band2.688   

その1種は隆線のあいだにある溝(稜間溝Sulci intercristales)で,もう1種は乳頭列のあいだにある溝(乳頭間溝Sulci interpapillares)である(図723).両種の溝が表皮の下面のこれと同じ形をした突出部によって充たされていることは,すべての乳頭が表皮のくぼみの中にはまりこんでいることから,当然である.したがって真皮の溝に対応する表皮下面の突出部には,稜間突起と乳頭間突起があるわけである.そして汗腺の導管は乳頭間突起の方についている.真皮の稜間溝は表皮の表面にも皮膚小溝Sulci cutisという溝として現われるが,乳頭間溝は表皮の細胞層に全く被われて外面にはみえない.しかし汗腺の開口すなわち汗口Pori sudoriferiは皮膚小溝のあいだにある高まりの上に,小さいくぼみとして見ることができる.この高まり(皮膚小稜)はそれぞれ真皮の1つの隆線と,それにつく2つの乳頭列に相当している.

 乳頭が非常に密に出ているのは小陰唇・陰核・陰茎・乳頭(乳房の)である.その高さは平均して55~100µ,最も長いものは110~225µで手掌と足底にある.また乳頭の幅はふつう高さの3/41/2である.手掌と足底の一定の場所で外皮が円形または少し長めのかなり大きい丘の形に高まって,それぞれの個所で触覚小球Toruli tactiles, Tastballenをつくっている.これらの丘はいずれもかなり豊富な脂肪組織の枕を容れているが,この脂肪枕のなかにはまたプアーテル小体(層板小体)が多数の群をなして存在する.また各触覚小球に相当して皮膚のその領域が表面積を増している.

 触覚小球には遠位・中間・近位の3つの列が区別され,これらは指端,中手(中足)-,手根(足根)触覚小球ともよばれる.

a)指端触覚小球terminale Tastballen(図724)はヒトの手には5つ,それぞれの指の末節の掌側面に1つずつある.指は上肢全体のうち最大の移動性を賦与されている末端部であり,触覚小球はそのよく動く指の先にあって,しかも最も豊富に神経をそなえている.そればかりでなく,この触覚小球と爪との強い対照が掌側面のはたらきを一段ときわだったものにしている.そんなわけで指端触覚小球は触覚の装置として最も重要なものである.血液の流出についても掌背の両面は対照的で.この点からみると手の掌側面は「神経がわ」,背側面は「血液がわ」ということができる.

b)中手触覚小球metaka rpale Tastbatlen(図724)はヒトの手には3つしかはっきり見わけられない.手掌の皮膚の遠位端で,尺側の4本の指の指間裂に接して存在し,したがって基節の根もとの部分にも属している.形は長めで紡錘形である.母指と示指のあいだではこれに相当する触覚小球が独立した高まりや独立した紋理としてはみとめられず,橈側の手根小球と合して1つになっている.

c)手根触覚小球karpale Tastballen(図724)は2つ,橈側に1つと尺側に1つである.母指球と小指球とに相当するが,これらはサルにみられるものとくらべると非常に退化したものである.手根の小球に限らず一般にサルの触覚小球は類人猿(この点ではすでに人に近い状態である)を別として,ヒトの触覚小球よりはるかによく発達している.

 足においても手に相当した関係がみられる.

 触覚小球のところでは皮膚小稜がとくべつな配列を示す.手でも足でも触覚小球をはずれたその間の領域ではの方向に走る小稜が優勢である.しかし触覚小球そのものの上では輪状またはに走るものが多い.このような皮膚小稜の走向の変化があるために,触覚小球は一層はっきり他の部分と異なってみとめられる.

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最終更新日12/04/13

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