Rauber Kopsch Band2. 474   

Fujita(Morph. Jahrb., 73. Bd.,1934)は驚歎に値いする解剖標本をもとにして上に述べたのとやや違う顔面神経の枝の分け方を提起している.Fujitaの所見によると,これらの枝の走り方と分れ方は非常にまちまちであり,それも同じ頭部の両側でさえも違っている.すべての枝が相合して1つの網目構造をなしている.知覚神経との結合は大と小の両後頭神経・大耳介神経・舌咽神経(いつも見られるとは限らない)・耳介側頭神経・眼窩下神経・頬神経・オトガイ神経・頚横神経・頬骨顔面神経および頬骨側頭神経(多くのばあい存在する)とのあいだに見られる.これに対して前頭神経の内側枝と外側枝.滑車上神経・滑車下神経および外鼻枝とのあいだには結合が存在しない.--なおまた,動脈と交叉するときには顔面神経の枝のほとんどすべてがその動脈のまわりの交感神経叢と結合をなしている.

VIII. 内耳神経N. statoacusticus(図511, 523)

 その根束は内側面に1つの溝を有し,顔面神経の両部分をその溝に入れて,この神経と相伴って内耳道に入る.内耳道の底で両者がたがいに分れる.そして内耳神経は前庭神経N. vestibuliすなわち平衡神経N. staticusと蝸牛神経N. cochleaeすなわち聴神経N. acusticusとよりなっており,この両神経はそれぞれ1つの脊髄神経節に似た神経節をもっている.これが前庭神経節Ganglion vestibuliおよびラセン神経節Ganglion spirale cochleaeである.後者は蝸牛の中にあり,前者はその主要部分が内耳道の底にある.

 前庭神経節からは卵形嚢膨大部神経N. utriculoampullarisと球形嚢神経N. sacculiと後膨大部神経N. ampullae posteriorisとがでる.そのうち卵形嚢膨大部神経はさらに卵形嚢枝Ramus utriculi,上膨大部枝Ramus ampullae superiorisおよび外側膨大部枝Ramus ampullae lateralisに分れる.これらの枝はみな膜迷路の神経終末部にゆく.

 蝸牛神経N. cochleaeはそのをもっぱら蝸牛に送っている.

 前庭神経節とラセン神経節とは魚の脊髄神経節に似て両端から突起のでる紡錘形の双極神経細胞をもっている.

ラセン神経節は蝸牛神経がラセン状の花弁のように散開しているのに相当して長い1つのラセン状の条をなしている(感覚器の項参照).

[図523]側頭骨錐体の内部における顔面神経と内耳神経の経過と結合関係(HirschfeldおよびLeveilléによる)

IX.舌咽神経N. glossopharyngicus(図511, 515, 520)

 舌咽神経の起始核については424頁を参照せよ.それによってわかるようにこの神経は最初から混合性である.すなわち知覚性の部分と運動性の部分とからなっている.その根束は延髄の後外側溝の上部で脳を去る.これらの根束は細い枝を柔膜に送り,次いで直ちにいっしょになって前方のかなり細い索と後方のいっそう汰い索となり,両者は密接して並び,合して頚静脈孔の前方部に達する.そこではこの神経は1つの特別な硬膜鞘に囲まれている.

S.474   

最終更新日12/04/13

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