Rauber Kopsch Band2. 330   

これは菱脳ヒモTaenia rhombehcephaliと名づけられている(図421, 422).菱脳ヒモの上部は小脳の片葉Flocculusからその虫部小節まで延びている(図427),後述の小脳の項, 333頁のおよび髄帆の 338頁を参照されたい.

 第四脳室底は,わずかにへこんでおり,且つその形から菱形窩Fossa rhomboides, Rautengrubeと呼ばれ,その表面は灰白色をおび,また多くの特徴を示している.その下方に向かって尖った端はペン先に似ているところから筆尖Calamus scriptoriusと呼ばれる(図422).

 正中にある縦の溝(菱形窩の正中溝Sulcus medianus fossae rhomboidis)は菱形窩を左右同形の両半に分けている.髄条Striae medullares(図421)は1本のかなり太いものか,またはいく本かの細いものに分れている白い髄質の横走する細いすじで,これは第四脳室外側陥凹のあたりから横に走って正中線に達している.この髄条によって菱形窩は上部,中部および下部の3領域に区切られる.

 菱形窩の下部は延髄に属している.ちょうど髄条が通っている中部は後脳に属し,ここは側方へは第四脳室外側陥凹Recessus lateralis ventriculi quarti(図422)に続いており,この陥凹は索状体にそって側方に回り小脳の片葉柄Pedunculus flocculiにおいて終る(図427).菱形窩の上部は側方が結合腕によって境される.

 正中溝のそばで各側に低くて縦に長い高まりがあり,これを内側隆起Eminentia medialisといって(図421, 422),菱形窩の全長にわたるものである.これは上方の領域では幅がいっそう広くなり且つはっきりしてくる.その側方の境をなすのは浅い溝で,この溝を菱形窩分界溝Sulcus limitans fossae rhomboidisという.さらに菱形窩の下部には,濃い灰白色と軽いへこみを呈することで目につくところの灰白翼Ala cinereaという三角形の部分があって,その下には灰白翼核Nucleus termimalis alae cinereae(=舌咽,迷走両神経の終止核)がある.灰白翼の上部の尖ったところが特に深くなっていて下窩Fovea caudalisと呼ばれる.灰白翼の上方に向かった尖端から正中溝に垂直線を引くと,三角形の領域が境される.これを舌下神経三角Trigonum n. hypoglossiといい,その下には舌下神経の核がある.灰白翼と菱脳ヒモとのあいだにある狭い領域は最後野Area postremaと呼ばれる.第四脳室外側陥凹への入口のところで,第四脳室の底が高まって低い丘すなわち前庭神経野Area vestibularis(図421, 422)をなしている.

 髄条の上方で,内側隆起は幅が広くなり,且つここにかなり著しい1つの円味をおびた高まりを作っており,これを顔面神経丘Colliculus facialisという.これは顔面神経が脳内で成している膝によるものである,この高まりの外側縁では,菱形窩の表面がおちこんで上窩Fovea rostralisという小さいくぼみをなしている.これより前方では各側に結合腕に密接して青みをおびた着色の場所があり,これは中脳水道への入口にまで達していて,青斑Locus caeruleusとよばれる.

B.後脳Metencephalon, Hinterhirn I

I. 橋Pons, Brücke(図409, 410, 417, 420)

 橋は脳底にある1つの強大な膨らみであって白くみえ,下方は延髄,上方は左右の大脳脚からはっきりと境されている.しかしいま述べた諸性質は橋底部Pars basialis pontisだけのことである.橋背部Pars dorsalis pontis(すなわち橋被蓋Brückenhaube)は菱形窩の上部を境している.橋の外側の境界は,左右とも三叉神経と顔面神経の両者の根が出るところをむすぶ線,すなわち三叉神経-顔面神経線Trigeminus-Facialislinieによって定められる.この線より外側にあって,小脳に達する橋の部分は橋腕Brachium pontisと呼ばれる.

 橋の腹方面は横および矢状方向に強く膨らみ,横走する強い線条が目立っている.この横走する線条は全体的にいえば橋腕への道をとっている.そのさい上部の線維束は背方に向うと同時に下方に傾いている.中央部の1つの束がこの傾向を特に強く示し,横走する他の線維の上を越えて顔面神経が出る場所に向かって進んでいる.これが橋斜束Fasciculus obliquus pontisである.

S.330   

最終更新日12/04/13

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