Rauber Kopsch Band1.077   

 それゆえ切断された神経線維がふたたびくっついて治ったかどうかは初めのうちはどちらでもよいのである.しかしその合一がいつまでも失われていると,そのもとをなす神経細胞何ヶ月あるいは幾年かの内に萎縮してゆく.

 若い動物では神経細胞から全く切り離され末梢株の中で再生がおこるのである(自発的再生autogene Regeneration, PhilippeauxとVulpian, Bethe).そのときは第4日頃からシュワン鞘の核と原形質がさかんな増殖をはじめる.20日間たつと変性した髄質の残りがほとんど全くなくなる.シュワン鞘の核と原形質が帯のような線維すなわちBandfasern(帯線維の意)をつくる.その中で外方の被う部分と中軸をなす部分が分かれてきて,後者はすでに原線維性のすじのようなものが存在する.その後に髄質の被いができる.それも核の近くでまずあらわれるのである.このさいなおわかることは,この再生現象は末梢株の中心端のところで末梢の部分よりもいっそう速やかに進行すると,中心部に近いほどそれが大きいということである.しかし自発的再生によってできた神経はのちにふたたび変性してしまう.

 成長した動物でも自発的再生という現象は起きるが,それは中絶してします.つまり神経線維に自らその再生を完了するだけの力がない.再生をやり通すことは神経の中心端の影響があって初めて可能である.中心端は末梢株の仕事似た強いてただそれを激励するだけのはたらきをもつのである.Bethe, Folia neurobilogica 1907. この問題のいっそう新しい総括はBoekeの論文(D. Z. Nervenheikunde,115. Bd.,1930)にある.

 中枢機関の中にある神経組織が傷ついたり物質欠如をおこした場合に,いかような変性および再生の現象がおこるかという問題は今後の研究に待たなければならない.残っている神経細胞が増殖することによって神経物質が新たに作られことは成長した温血動物ではおそらく全然おこらないのである.しかし硬骨魚類ではそれがKirsche, W. (Die regenerativen Vorgänge am Rückenmark erwachsener Teleostier nach operativer Kontinuitätstrennung. Arch. mikr.-anat. Forsch., 50. Bd.,1950)によって証せられた.同じ人の論文“Uber Neubildung der Gangllienzellen・・・”がVerh. anat. Ges.,1950に載っている.

 化学的検査の結果,神経細胞がだいたいにおいて発生可能な細胞の組成を持つこと,しかしレチチンとコレステリンを比較的多く含むことに特色があることが分かった.なお成長した体の神経細胞の核にはヌクレインがわずか痕跡的にあるか,胎児の神経細胞にはこれが豊富である.

 神経諸器官の二次的な成分としては次ぎにあげるようないろいろの物質がある::ノイロケラチン,ケファリン,プロタゴン,クレアチン,タウリン,グリコーゲン,乳酸,イノシット,ナトリウム化合物.尿素とロイチンの存在は疑問である(Kossel).

[図140]原形質性のグリア細胞 ヒトの大脳皮質より.(K. Schaffer,1915)Iは2核をもつ細胞:IIは1核をもつ細胞.

成人における細胞の総数Zahl der Zellen des Erwachsenen

成人の平均体積は600000ccm

1個の細胞の平均体積0.000008ccm

細胞の全数(血液を除いて)はおよそ8兆.

 この章の本ですでにあげた文献の他に,次に述べる教科書は組織学を全般的にとりあつかったものである.

Bargmann, W., Histologie und mikroskopische Anatomie des Menschen. G. Thieme, Stuttgart , Bd. I,1948, Bd. II,1951.-Gegenraur-Furbringer, Lehrbuch der Anatomie d. Menschen. Bd. I, Viii. Aufl. Leipzig.1909.-Herrath, E. von und Abramow, S., Atlas der normalen Histologie und mikroskop. Anatomie des Mensche. G. Thieme, Stuttgart ,1950.

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最終更新日12/04/13

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