Rauber Kopsch Band1.054   

e)塩基好性白血球basophile Leukocytenは数がはなはだ少なくて,細胞体は大きい顆粒に富むが,この顆粒が比較的に少量であることもある.顆粒は塩基性アニリン色素に染まり,その大きさと形がはなはだ不規則である.この細胞の核は多形である.

[図93]ヒトおよび諸種の動物の赤血球を同じ拡大で示す.(Freyによる.) Mensch・・・ヒト,Kamel・・・ラクダ,Cobitis・・・シマドジョウ(硬骨魚類),Taube・・・ハト,Triton・・・イモリ(有尾両棲類),Proteus・・・ヨーロッパの洞窩に住む盲目の有尾両棲類,Frosch・・・カエル,Ammocoetes・・・スナヤツメ(円口類)の子供.

[図94]アメーバ様の運動 カエルの白血球の1個が10分間に示した形状の変化.24時間前にそのカエルの背部リンパ嚢に墨汁を注射したので,墨の粒が白血球の中に取り込まれて大小の黒い点としてみえる.

 上に述べた3種の顆粒をもつ白血球(c,d,e)を総括して顆粒白血球Granulocytenという.核の形によって分けると棒状核stabkeringと分節核segmentkernigの顆粒白血球とがある.核がいくつかの片に分かれているとはおそらくその白血球が古くなったことを示すのである.

 白血球の有糸分裂はSpronckによると哺乳動物の循環している血液の中でも見られるのであって,その頻度は1000の白血球におよそ2つである.白血球の数が増加するための,絶え間ないいま一つの源をなしているのがリンパであって,これは本書ですでにリンパ球の生成するところとして述べた諸器官から新しい白血球を血液の中に絶えずみちびき入れているのである.

 上述のことからわかるように,血液およびリンパのもつ白血球,リンパ球やリンパ性の細胞は同じ由来のものである.骨髄もまたほかの流水のもののほかにこの類の細胞をもっている.すなわち骨髄細胞Markzellenがそれである.その他の組織ではこれと同類のものが遊走細胞Wanderzellenとよばえて散在している.遊走細胞の少なくとも一部は血管から外に出てきたか,あるいは白血球じしんがその成生した所から直接にやってきたものである.遊走細胞のほかの一部,すなわち単核球はおそらく固定結合組織細胞に由来する.

 遊走細胞は上皮の細胞間にはいってゆくこともできるのであって,かくして上皮の表面に達し,あるいは上皮層の内部で壊れてしまう.消化管の全体で遊走細胞が上皮の表面に達する(Stöhr).それゆえ唾液の中にも入っており,ここでは唾液小体Speichelkörpercheとよばれて,唾液のはたらきの一翼を担っている.遊走細胞および一般的に云って白血球は,それらが如何なる所にあっても,必要な場合には食細胞Freßzellen, Phagocyten (Metschnikoff)としてはたらきうるのである.すなわち小さい警備器官として作用して,使い古したものを身体から取り除くことを手伝ったり,病気を起こす微生物を摂取して消化したり,細胞の壊れてできた屑を身近らの細胞体内に取り入れて,それを掃除したりする.また白血球が血管からどっと外にでてゆき,それも内皮細胞の間を通って外に出たものがEiterの主成分をなすのである(膿小体Eiterkörperchen).両棲類の遊走細胞では中心小体がいつまでも消えないで認められたのである(図10).ヒトの白血球では2個の中心子がたがいに密接してならんでいる.

[図95]血小板 ヒトの血液,Deetjenの考案した液を用いた.1%のオスミウム酸で固定,ヘマトキシリンで染色.×2000.

[図96]血小板 ヒトの新鮮な血液より直ちに固定した.面の方向および角の方向よりみたもの.×2000.

4. 血小板Blutplättchen, Torombocyten (Dekhuyzen)は小さいもので,1~3µの大きさであり,一部の学者(Deetjen, Kopsch等)によれば核をもつ細胞である.循環している血液の中では血相板の形はその面の方向からみれば円く,角の方向からみると砥石状である(図96).新鮮血液を固定した標本でみると若干の血小板は1つあるいは2つの細い突起を出している.血小板の比重は血漿のそれより低いので,生の血液標本ではそれが上方の層に集まるために,顕微鏡の焦点を被いガラスの下面に合わせると,それが明るく輝く点状のものとして容易に認められる.血小板は非常に不安定なものであって,そのまわりの血漿がごくわずかの変化を示しただけで,これが害されると.そのとき血小板はたがいに粘着し,また近くにある対象物に固く付着して,核が溶けて原形質が泡のようなものにかわって破壊するのである.この現象が血漿の凝固を引き起こし,またそれを条件づけるものである.

 Deetjenの方法によってつくられた新鮮標本では血小板の各区が緑色をおびた輝く点状のものとして認めあれる.その原形質が尖った突起をのばし,これがふたたびひっこめられる.

 ごくわずかであるが,位置の移動されも血小板で観察されている.図95は血小板がどういうぐあいにみえるか,その大きさがどれくらいちがうかを示すのである.

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最終更新日12/04/13

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