動物と植物は細胞Cellula, Zelleとよばれるところの,多くは顕微鏡の力をかりてやっと見ることができ,何れも相似た性質をもつところの基本単位から構成されている.
定義:細胞は生活物質の1つの塊であって,細胞核Zellkernと細胞体Zelleibとよりなり,この塊は形態の上からも機能の上からも生物体の基本的な単位とみなされるのである.
成長を遂げた生物体では同一の組織内の細胞は多くの場合たがいに数多くの突起で結合している.もっともこの突起の数が少ないこともある.また異なる組織に属する細胞相互のあいだにも融合があって,かくして高度の機能的全一性がえられる(例えば神経細胞と筋細胞もしくは上皮細胞とのあいだ).しかしこの事実は独立した単位であるという性質を個々の細胞からうばいさるものではない.(Heidenhain, Plasma und Zelle.1907-Boeke, Med. Klinik.1925.-Patzelt, Z. mikr.-anat. Forsch., 3. Bd.,1925)
細胞がもつ高い一般的な意義は次に述べる概括からわかるのである:
1. 植物および動物のからは細胞あるいは細胞のつくったものからできている;
2. 植物および動物の体は細胞から出発する.その細胞は卵細胞と精細胞とである;
3. 細胞は生活機能を担うものである.すなわち生命の単位Lebenseinheitである(ウィルヒョウR. Virchowの細胞病理学Cellularpathologie);
4. 生物の系統において最も低い位置にあるものは単細胞の生物(Unicellulaten, Protisten)である.それより高等な生物の体は細胞が集まってそれをなしている.すなわち多細胞生物(Multicellulaten)である.これに後生殖物Metaphytenと後生動物Metazoenとがある.
おのおのの細胞は細胞体Zelleibと核Zellkernとからなる.
細胞膜Zellmembranは細胞の本質的なものに属しない.植物の細胞(図1)ではじようぶなセルローズの膜で囲まれているから細胞膜という名前が適当であるが,動物の細胞では特別な膜を探し求めても多くのばあいむだである.そこでは普通は細胞体の最も表層のところが密になっているにすぎない.
むかしHermann Lotze(Allgem. Physiol. d. Körperlichen Lebens,
これに反して瀘過性病原体すなわちウィルスの各種は人,その他の動物や植物でたくさんの数(100以上)の伝染病(例えば天然痘,狂犬病,ハシカ)をひきおこすものであるが,もはや細胞ではないかも知れない.何となれば最も小さいウィルスは1個のタンパク質分子よりも大きくはない.それは細胞になる前の有機体であって,その最も簡単な種類のものは核タンパク質からのみできていて,複雑な種類のウィルスはその他にリポイドと含水炭素を含んでおり,その組成からして細菌と違っていないものである.
[図1]植物細胞(Sachsによる.)
最終更新日 10/08/31
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