Rauber Kopsch Band2. 46

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d) 間脳

 第三脳室の中心灰白質は下方は中脳水道を囲む灰白質へと続き,後者がまた第四脳室底の灰白質に続くのである.上に述べた諸部分の中心灰白質は腔灰白質Höhlengrauと呼ばれる.第三脳室のそれは腹方では中断することなく脳底の灰白交連に続き(345頁),外側は視床内側核と続き(346頁),また中間質もこのものによって作られている.第三脳室の腔灰白質はその前方部において特に大きい.視神経交叉のところではほとんどこのものだけで第三脳室の壁ができている.ここには多数の神経緬胞があって,その多くは小形で双極である.また手網三角のなかで小さい多極神経細胞が棍棒状の特別な集り(348, 349頁)をしているのが手網核Nucleus habenulaeである(図436).ここからは反屈束Fasciculus retroflexus(=手網脚間路Tractus habenulointercruralis),あるいはマイネルト束Meynertsches Bündelという有髄線維の束(図505)がでて脚間核に達している(図433参照).乳頭視床束Fasciculus mamillothalamicus,すなわちヴィック・ダジール束Vicq d’Azyrsches Bündelおよび脳弓柱の没部については348頁図410とを参照せよ.

[図475]第三脳室の側壁における植物性機能の中枢

Grevingの説, Handb, m ikr. Anat., Bd. IV.,1928による諸中枢.

 上に述べた諸核めほかになお比較的小さい神経細胞の集りがいくつかあり,そこにば多くの枝をもつかなり大きい神経細胞も存在していて,これらの集りの或るものは一定の自律神経系の機能を調節する間脳中枢とみなされており,そのため植物性間脳中枢vegetative Zwischenhirnzentrenと呼ばれている.

 それは次のものである(Grevingによれば):視索上核Nucleus supraopticusは視神経交叉の近くで視索の上にあり,灰白隆起にまで達していて,これは水代謝との塩類代謝との中枢であるという.隆起核Nucleus tuberisは灰白隆起の全体を満たしていて,これは体温調節の中枢であるという.第三脳室の内面のすぐ下にある室傍核Nucleus paraventricularisは脳弓柱没部の内側にあって,脳弓柱よりも前と後に長く延びており,炭水化物代謝の中枢であるどいう(図475).

 視索上核の細胞は分泌物と考えられる封入体をもっている.この神経分泌Neurosekretionという現象は中枢神経系のそのほかの細胞にもあるとされている.

 しかしSpatz(S. ber. phys.-med. Ges. Würzburg)によれば,灰白隆起はいわゆる“間脳の生殖機能中枢diencephales Geschlechtszentrum”であり,ここが生殖細胞の成熟をつかさどるのであるという.

 乳頭体Corpus mamillareの内部には3つの灰白質核,すなわち乳頭体核Nuclei corporis mamillaris(343頁および伝導路の項参照)がある.これらの核には長さ20~30µの紡錘形の神経細胞がみられる.3つの核とは大細胞性核が1つ, 小細胞性核が1つ,それと小さい細胞からなる灰白核Nucleus cinereusである.

 乳頭体に入ってくる線維は,皮質乳頭路Tractus cortico-mamillarisであり,出てゆく線維は乳頭視床束Fasciculus mamillothalamicusと乳頭被蓋束Tractus mamillotegmentalisとである(図505).

 下垂体Hypophysis cerebri(図446)は脳の続きである小さい後葉,すなわち神経性下垂体Neurohypophyseではグリア,血管および結合組織がそれを構成していて,神経細胞や神経線維は含まれていない.

 腺性下垂体Adenohorpophyseの主部Pars principalisは主として上皮性であって,多くは空洞をもたないが,一部のみは腔所をかこむ細胞索からなり,細胞索の太さはすこぶるまちまちであって,比較的明るい細胞と暗い細胞とが集合してできている.明るい方の細胞すなわち主細胞は全部の腺細胞のおよそ半ばを占め,暗い方の細胞は粒子をもっており,この粒子の染色性の相違により酸好性細胞と塩基好性細胞(図476)とに区別される.

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酸好性細胞は成長ホルモンを,塩基好性細胞は生殖腺刺激ホルモンを分泌するという.腺緬胞の集りは血管をもつ疎性結合組織によって包まれている.血管は内腔が広くて,壁が薄い.

 中間部Pars intermediaは塩基好駐組胞の集団と,腔所をかこむ塩基好性細胞の索および膠質に満たされた小胞があり,この小胞は甲状腺のものに似そいるが,多層の細胞よりなる壁をもっている.またその細胞のうち少数のものは線毛をもっていることがある.下垂体の膠質と甲状腺の膠質とは組織化学的反応がすべて一致している.

 咽頭下垂体Hypophysis pharyngicaについては64頁参照

 松果体Corpus pineale(Zirbel, Epiphptse)(図447)は結合組織性の被膜をもち,これが内部に突起を送って,それによって松果体はいくつかの部分に分けられている.その各部分は多角形の上皮細胞の群,グリアならびに血管,神経線維および神経細胞よりなる.脳砂Hirnsandについては349頁参照

 脳砂の粒子(図429)は,類澱粉体Cbrpora amylaceaと似たものである.後者は割合に高令め人で特に脳室壁に,また灰白質と白質のなかにも,また末梢神経にも見られ,円形ないしくびれた形をしており,はっきりと層をなして,灘粉の粒子Stärkekörnerと同じくヨードと硫酸で紫色に染まる.

 視床Thalamusはその背方面が有髄神経線維よりなるよく発達した帯層Stratum zonale(thalami)によって被われている.二視床の3つの主核とこれらの核を多かれ少なかれ区分している髄質板,すなわち視床髄板Laminae medullaes thalamiについては346頁を参照せよ.そのところで乳頭視床束の起始およびこの線維束が視床前核のなかで分散して終ることも述べておいた.視床のすべての核の神経細胞は数が多もそして小さい.その最も大きなもの(40µ)は視床前核と視床枕の細胞である.

[図476]ヒトの腺性下垂体の主要な細胞の種類

 種々の研究方法によってこれらの主核の内部には数多くの(多数の学者により30あるいはそれ以上の)小さい核が区別されている.これらの核の大部分のものについてはその関係がまだ正確にはわかっていない.

 視床はおそらく視床の柄および視床の放線冠を通る線維によって(369, 370頁および図444参照),おそらく回旋回と角回とを除いた大脳皮質のあらゆる部分と往復2重の結合をしていると思われる.

 そのほかに視床Thalamusにはこれに入ってくる重要な結合がいくつかある:それはまず視索の線維で,これは視覚伝導路の3次ニューロンの神経突起である(図360).その線維は一部は帯層に達するが,他の一部は視床枕の深部にある細胞群に達する.その他の視床の結合としては,視床外側核に達するものに脊髄視床路Tractus spinothalamicus(322頁参照),内側毛帯Lemniscus medialis,赤核からの線維およびレンズ核との結合がある(図509).

 視床から出てゆく伝導路abführende Bahnenとしては赤核にいたるもの,またオリーブ核に達する線維(視床オリーブ路),中心被蓋束,淡蒼球と大脳皮質に達する結合,視床皮質路がある.

 外側膝状体Corpus geniculatum lateraleの神経細胞は数が多くて,多極であり,多くは色素をもっている.その神経突起はいわゆる1次視放線“Primäre Sehstrahlung”すなわち(視覚の)膝状体皮質路Tractus geniculocorticalis(opticus)として有線領に達する.

 内側膝状体Corpus geniculatum mediale.その灰宮質は背方と腹方で視床の灰白質に移行している.その神経細胞は数が多くて,最大の直径が約25µのものである.

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それらの神経突起は(聴覚の)膝状体皮質路Tfactus geniculocorticalis(acusticus)となって上側頭回に達する.

 内側膝状体のなかで外側毛帯の線維が終り,また下丘から発する線維も終わっている.その細胞の神経突起は大部分が上側頭回に達する.

 手網核Nucleus habenulaeがもつ結合は,この核に入ってくるものzuführende Verbindungenとしては,嗅三角から出て視床髄条を経てくるもの,またこの核から出てゆくものabführende Verbindungenとしては,反屈束を通って脚間核に達するものである.そのほかに後交連との結合がある(図505).

 それゆえ手網核のなかに嗅神経の反射路olfactorische Reflexbahn が宿つており,これは反屈束や後交連を通って被藍の諸核に達し,後者から出てゆく伝導路,すなわち網様体脊髄路,内側縦束およびその他の線維群を介して前根を出す運動性の核に作用する.

 視床下核Nucleus hypothalamicus(図433),すなわちルイ体Corpus Luysiは黄褐色の色素をもつ神経網胞よりなり,そのあいだを神経線維がいろいろな方向に走っている.この核はレンズ状のもので,その背方と腹方は薄い髄質の被膜で包まれ,この被膜は複雑にもつれ合ったようにみえる線維群でできている.この核はレンズ核の淡蒼球と最も密接に結合している(図509).

 Grevingによれば,これは眼球内の筋肉(瞳孔散大を起す),膀胱の筋肉, 血管および汗の分泌に対して上位の調節中枢をなしているという.

 不確帯Zona incertaは境のはっきりしない灰白質の板であって,視床と視床下角とのあいだにあり,下方は中脳被蓋の毛様体につづくもので,この不確帯のおもな成分である縦走線維束はごくわずかの神経線維をもつ灰白質によって分散されている.不確帯は内側では第三脳室をとりまく腔灰白質に,外側では視床の格子層に,前方は灰白隆起に移行している.

 レンズ核の淡蒼部(淡蒼球)Pars pallidaはSpatzによれば間脳に属するものであるという.これについては419頁を参照されたい.

e)大脳皮質Substantia corticalis cerebri
1. 大脳皮質の構造についてその全部に共通な性質(図477)

 白質から灰白質の皮質のなかに神経線維束が入り,この線維束は髄放線Markstrahlenあるいは放線束radiäre Bündelと呼ばれる.この線維束は皮質の外方縁にすすむとともに次第に細くなり,皮質の表面に近い層では(束としては)もはや存在しない.そこで皮質に外方の主層äußere Haaptschichtと内方の主層innere Hamptschichtとが区別できる.両者の境は髄放線が認められなくなるところである.もっとも外方の主層にも放射状に走る線維があるにはあるが,これは束をなして集まってはいない.

 髄放線に対して横に,すなわち皮質の表面に平行して,数多くの神経線維が走っている.この線維はいろいろな方向に走り,たがいに交叉する.その量は外方の主層では少なくて,内方の主層では豊富である.内方の主層の範囲では,これらの線維を放線間網工interradiäres Flechtwerkといい,外方の主層の内部では放線上網工superradiäres Flechtzverkと呼ぶ.これらの切線線維Tangentialfasernの比較的密な集りが3ヵ所に見られる.これが皮質白層Strata alba corticisであって,しかも第1,第IV,第V層にある.第1層の内部では外切線線維äußere Tangentialfasernと呼ばれる.第IV層と第V層とにある比較的密な条はそれぞれ外および内バイアルジェ線条äußerer und innerer Baillargerscher Streifenと呼ばれる.これらのうちで外バイアルジェ線条はジェンナリ条Gennarischer Streifenとして知られている.これは有線領Area striata(図482)では特にはっきりと見られる.

 大脳皮質の神経細胞は,その形から錐体細胞Pyramidenzellenと呼ばれ,上に述べた多くの神経線維の束や叢のあいだにある.皮質の神経細胞の大きさはまちまちであるが,その形は多少とも一定していて,あるいはかなり密に,あるいは比較的まばらに集まっている.さて灰白質のいろいろな層のなかで同一種の細胞形のものが一定の様式に従って配列しているので,表面に平行した層形式が生ずるのである.

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層形成は大脳皮質の個々の場所でことなるが,6層をなす基本型sechsschichtiger Grundtypus(Brodmann)に帰着させることができる.

 まずこの基本型について観察してみよう.柔膜のすぐ下にある外方の層は神経細胞に乏しくてグリアが豊富にある.この層はI. 表在層Lamina zonalis, Molekularschichtと呼ばれ,そこには外切線線維がある.これに続く小さい錐体細胞の集まっている層はII. 外顆粒層Lamina granularis externa, äußere Körnerschichtである.つぎに中等大の錐体細胞の層があってIII. 外錐体層Lamina pyramidalis(externa), pyramidenschichtと呼ばれる.ジェンナリ条Gennarischer StreifenのあるところはIV. 内顆粒層Lamina granularis interna, innere Körnerschichtと呼ばれる小さい錐体細胞の集まった1層であり,これに次いで髄放線の範囲にはV. 内錐体層(神経細胞層)Lamina pyramidalis interna(Lamina ganglionaris), Schicht der tiefen großen PyramidenzellenとVI. 多形細胞層Lamina multiformis, Schicht der polymorphen Zellenがある.

 大脳皮質で最も特徴のある細胞成分は錐体細胞Poyramidenzellenである.その大きさはさまざまである.最も小さいものは底め直径7µ, 最も大きいもの(中心前回の巨大錐体細胞)は底の直径が40ないし80µに達する.錐体細胞は3ないしそれ以上の側面と,髄質に向う1つの底ならびに長くのび出た尖端(尖端突起あるいは主突起Spitzen-oder Hampt-fortsatzと呼ばれる)をもち,これは脳の表面に向かって走っている.尖端突起は側方に細い枝をだし,幅が狭くなり,その終りは細い枝に分れる.底の角からは同じように枝分れする3~5本の突起,すなわち側方への底突起seitliche Basalfortsätzeが出る.これに反しで底の中央からは,1本の神経突起,すなわち中央の底突起mittlerer Basalfortsätzeが出る.これは放射方向にすすんで髄質稜に達する神経線維の軸索となるが,その他の突起は樹状突起である.神経突起は多数の側枝を出しつ刈髄質に向かって走る.多くの神経突起は髄質の近くでそれぞれ1本の水平方向の枝と下行性の下枝とに分れる.錐体細胞の核は楕円に近い形であり,はっきりした1個の核小体を有っている.その細胞体は,特に比較的大きな細胞では黄色を帯びた色素を有っている.

 外切線線維層には多くは切線方向に走る多数の神経線維と,カハール細胞Cajalsche Zellenという特別な種類の細胞とがある.この細胞の形は不規則で,多趣細胞であり,その長い突起が切線線維の方向に走っている(図478, 2).この細胞は2本以上の神経突起を出している.またこの層にはそれより奥にある諸層の小さい錐体細胞の突起がきている.第3に多くは有髄性の太い神経線維(図478, 6)が髄質層からやってきて途中で枝を分ちながら,切線線維層そのものの中でもなお分枝をなしている.この線維は遠くにある細胞から起るもので,遠方線維Fern-Fasernと呼ばれる.第4に,内方の主層に属する錐体細胞の突起が皮質の最表層のところで密な終末分枝をして広がっているのが第1層の中にある.

 これに続く多形細胞層には三角形および短い錐体の形をした多数の細胞があり,これらの細胞は突起の数が少いが,突起の性質は上に述べたものとよく似ている.この同じ層の中にはさらに多数の軸分枝細胞(図478,8)があり,この細胞は他のすべての層のなかにも存在するのである.

 放線上網工,放線間網工およびジェンナリ条を一定の細胞と関係づけるならば,放線上網工に含まれる有髄線維は遠くの細胞に由来しているようである.その遠さ加減はいろいろでありうる.ジェンナリ条は大部分が錐体細胞の神経突起の側枝からできているようである.放線間網工についても同じことが云えるが,そこでは軸分枝細胞の神経突起の枝の混在ということが一役を演じている.

 大脳皮質のグリア(第I巻,図134136)としては第I巻,7376頁に記したグリア細胞のあらゆる形のものが存在する.しかしその細胞の位置と数については灰白質と白質とのあいだで違いがある.灰白質のなか(および線条体のなか)では,長突起細胞はほとんど全く欠如し,たず表在層のなかと白質にすぐ接する皮質の深層にだけこの細胞が少数に散在している.短突起細胞はかなりの量に存左する.稀突起グリアOligodendrogliazellenとオルテガ細胞Hortegazellenとは主として神経細胞と血管の近くにある.

 白質のなかでは長突起細胞が数において優つており,短突起細胞はただまれにみられる.稀突起グリアは白質にたくさん存左し,しばしば血管に沿って列をなしてならんでいる.オルテガ細胞は灰白質におけるよりも数が少なく,しかも全く不規則な配列をしている.

2. 大脳皮質の構造の場所による相違

 大脳皮質の解剖学的構造は細胞の層形成,すなわち細胞構築Cortoarchitektonikをみても,また神経線維の分布すなわち髄構築Myeloarhitektonikをみても個々の領域で同じではない.各領域のあいだで多かれ少なかれ違いが存在する.重要な相違はすでに早くから中心傍小葉,鳥距溝の周囲,透明中隔,海馬傍回,海馬足,歯状回,嗅葉,また一部が嗅葉に属している嗅野,島の皮質などにおいて知られていたのである.

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 Brodmannおよびその他の学者による広汎な研究によって細胞構築Cytoarchitektonikの驚くべぎ多様性が大脳皮質の数多くの点. について確かめられてきた.

 Brodmannはおよそ50の領域を区別して,皮質領RindenfelderあるいはAreaeと名づけている.

 “退化的rudimehtär”な皮質領域(帯状回の一部や嗅脳)は例外であって,これらの場所では6層構造が胎生期にも誰明されないし,あるいは今日までにその証明ができていない.

[図477]ヒトの大脳皮質の構造(Brodmannによる模型図)

 個々の皮質領の構造の違いは,基本型に次のような変化がおきることによって生ずるのである.すなわち個々の層の数とその発達度が変ること,あるいは横断面の全部ならびに個々の層における細胞成分の密度とその大いさが変ること,ある特別の細胞の形がでぎてくること,皮質全体の厚さが変り,またそれぞれの層の相対的な厚さの関係が変ることである.(図480, 481, 483を比較されたい.これらの図はいろいろな皮質領域を同一の拡大で示してある.)

 個々の層形成のぐあいがそれぞれその部分の皮質領に限られている.相隣る領域の境界は一部は線を引いたように鋭く,また一部では次第に移り変わっている.この境界は少数の例外を除いて多くは溝と正確には一致していない

 ここではこの重要な事実についてただ概括的な見通しを述べておく.興味があり,かつ重大なことばほかの研究者によってもすでに知られ,また強調されている次のことである.それは解剖学的に区別された皮質領域のいくつかが生理学的に決定された区域,すなわちいわゆる精神作用の中枢と完全に,あるいはかなりよく一致する(一致する程度にいくぶんの差はあるが)ことである.

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このことは中心前回にあって巨大錐体細胞型と一致する運動性中枢の場合,中心後回にある知覚性中枢の場合,言語中枢Sprachzentrumであるブローカ領Brocasches Feldの場合,言語理解の中枢Zentrumdes Sprachverständnissesであるウェルニッケ領Wernickesche Stelleの場合にあてはまる.また視覚領Sehsphäireは解剖学的によく境がつくところの鳥距型と一致し,その範囲は有線領Area striataとも呼ばれる.

[図478]大脳皮質の細胞の形 (クローム銀染色) (Cajalによる)

 1切線線維層;2 カハール細胞Cajalsche Zelle;3 小錐体細胞,その神経突起(n)を切線線維層に送っている;4 小錐体細胞,その神経突起(n)を脳の内方部に送っている;5 大錐体細胞とその尖端突起,側方と中央の底突起Basalfortsatz;底突起は髄質に達し,また側枝を出している;6, 6 遠くにある細胞の神経突起が枝分れしている;7,8 多形細胞;7は神経突起を脳の表面に向かって送る,8は多数の枝に分れた神経突起をもつ軸分枝細胞;9 白質.

[図479]中心前域と中心後域の細胞層 成人. ×20(Brodmannによる)矢印はその境を示し,同時に中心溝の底を指している.

 解剖学的構造とその機能とがかくも目立った一致を示すことから,解剖学的に境されたその他の皮質領に,もおそらく一定した別々の機能があるものど考えてよかろう.

 隣接するいくつかの領域は若干の共通した特徴を示しており,それゆえこれらの部分をまとめて主領域Regiones, Hamptregionenということができる.

Brodmannはそのような11の主領野を区別し,その或るものではその中にさらに亜領域Unterregionenを区別している.そのうちのいくつかについてだけとこで述べる.

 中心前域Regio praegentralis.これは中心前回,中心傍小葉の前方2/3およびこれに近接する上前頭回と中前頭回の部分どをふくむ.ここでは内顆粒層(図479)が退化していて,いわゆるベッツ巨大錐体細胞Betzsche Riesenpyramidenzellen(図479, 480)がみられる.そのためこの性質の層形成を巨大錐体細胞型Riesenpyramidentypusという.

 中心後域Regio postcentralisは中心後回に一致するもので,これは中心前域とは反対にはっきりと境された内顆粒層を有っていて,巨大錐体細胞は全く存在しない.

 後頭域Regio occipitalisは後頭葉の全体を含み,これと隣接する諸領域との境がはっきりしない.ここでは概して非常によく発達した6層形成(図481)がある.ただ例外として,視覚皮質Sehrindeであるところの有線領Area striataは8層を示しており,その層形成の様子は鳥距型Calcarinatypusと呼ばれる.層数の増加は内顆粒層が3分することによって生ずるのである(図483).

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 有線領の範囲は鳥距溝の壁をなしている皮質の部分と一致し,この溝の近くの周辺にごくわずかだけ及んでいるに過ぎない.これは大脳半球の外側面にはごく僅がだけのびているが,しばしばそこにほとんど達していないここどがある.これはおよーそ視覚中枢と一致している.

[図480]中心前域におけるベッツ巨大錐体細胞 成人.×66(Brodmannによる)

[図481]後頭裁の細胞層 成人.×66(Brodmannによる)

[図482]鳥距溝(f. ca. )とその付近の大脳皮質の断面(1/1)その灰白皮質内に1本の白い線条,すなわちヴィック・ダジール条(=ジェンナリ条)が目立っており,この条は灰白皮質の外方の面よりも内秀の面により近く存在する.

 ジェソナリ条は有線領の範囲では非常によく発達しているので,肉眼でたやすく見るごとができる.そしてヴィック・ダジール条Vicq d’Azyrscher Streifenの名で知られている(図434, 482).

 海馬足の構造は特別なものとされている.

 Schafferは哺乳類(家兎とブタ)の海馬傍回に次の諸層を区別した(図484).

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[図483]有線領(鳥距型)の8細胞層 成人.×66(Brodmannによる)

[図484]海馬足の模型図(K. Schaffer)

1 紡錘形細胞;2 多形細胞;3 軸分枝細胞;4 巨大錐体細胞;5 小錐体細胞;6 表在層の神経細胞;al錐体細胞の上行性側枝,これは(一部は多形細胞の上行性側枝でもあり)全部がStratum lacunosum(凹窩層)に移行する;7 歯状回に属する多角形の神経細胞;8 同じく紡錘形の細胞.

[図485]嗅球を通る横断面(Henle, Meynertの図および自らの標本を基にして半模型的にあらわしたもの) (G. Schwalbe)×18

[図486]嗅球と嗅索の構造を示す模型図(Cajal)

A嗅粘膜;B嗅球の嗅糸球;C僧帽細胞;D 嗅索;E 顆粒細胞;F 嗅索の錐体細胞;G 外側嗅条の領域;H 外側嗅条の側枝;J 嗅球内の側枝;L 遠心性の線維;M軸分枝細胞.

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 1. 槽Alveus;2. 多形細胞層, a) 紡錘形細胞fusiforMe Zelleni b)多角形の細胞Polygonale Zellen;3. 大錐体細胞層;4. 小錐体細胞層;5. 細胞の少い層一球形および紡錘形の細胞が若干ある.

 嗅球Bulbus olfactorius(図485, 486).嗅球の髄質は嗅球の中心をはずれて存在し,しかも背方と腹方の両板よりなっていて,この両板が縁めところでたがいに移行し,両者のあいだには灰白質の薄い1層が挾まっている.背方の皮質は極度に薄く,反対に腹方の皮質はそれだけ厚くなっていて,次の諸層がそのなかにある:

a)顆粒層Stratum granulosum, Körnerschicht.この層では有髄神経線維が網状をなして集り,その網の目に小さい神経細胞が集合している.

b)錐体細胞層Pyramidenschicht, または僧帽細胞層Mitralzellenschicht.この層には短い錐体の形をした多趣性の大きな神経細胞が1列をなしている.これらの細胞は多くの樹状突起の小幹を次の層すなわち膠様層に送り,その神経突起は上に述べた顆粒層の神経線維叢に達している(Golgi).

c)膠様層Stratum gelatihosum, gelatinöse Schicht.この層は大脳皮質の外方の主層äußere Hamptzoneに相当し,散在性の小さい神経細胞がある.

[図487]脳の横断面において交連線維と遠皮質性の線維との配列を模型的に示す(Cajal)

A 脳梁;B 前交連;C 錐体路(随意運動の伝導路).

a, b, c錐体細胞;d 側枝の上行性終末分枝;6 神経の終末分枝nervöse Endvezwetgung.

[図488]脳の縦断面において前頭葉と後頭葉のあいだの連合神経線維を模型的に示す(Cajal)

a, b, c 錐体細胞;d 側枝の上行性終末分枝;e 神経の終末分枝;f 脳梁の横断面.

d)糸球層Stratum glomerulosum, Knäuelschicht.この層には球形ないし卵円形をした直径0.1mmの嗅糸球Glomerula olfactoriaというものが数多く存在して,これが多くのばあい2列にならび,その各々が2種の終末分枝をもっている.すなわち嗅糸線維の中心性終末分枝とこれより1次だけ高い次数の嗅覚ニューロンの末梢性終末分枝とである.その間には小さい細胞がみられるが,これが神経細胞であるのか,グリアに属するのかはまだ充分に確かめられてはいない.嗅糸球はJ. N. A. では嗅線維終止核Nuclei terminales fibrarum olfactoriarumtと呼ばれているが,ここには神経細胞はない.

 嗅神経線維層.嗅糸球が集まっている層の下面で特殊な性質の無髄線維である嗅神経線維が密な叢をなし,鼻腔の粘膜からくる嗅糸とこれとが続いている.

 嗅索Tractus olfactoriusの一部は嗅三角の諸層の続きをなし,また一部は特に嗅索の下面とその側縁には神経線維が集まってできている.嗅索の上方の稜はおおむね灰白質よりなる.灰白質の1層が嗅索の中心部にあって,これは以前に嗅室Ventriculus olfactoriusがあったところである.嗅索の神経束は前頭葉と脳弓回た達し,また一部は前交連に属している.

 嗅三角Trigonum olfactoriumはその下面が嗅野と一致する性質の灰黄色の1層によって被われ,この層は嗅索に向かって著しく薄くなる.嗅三角の上部は前頭葉の皮質の続きをもっていて,これもやはり薄くなって嗅索に移行するのである.透明中隔Septum pellucidumには3層がある:それは薄い髄質層と薄い皮質層と(外側の)上衣層とである.皮質層には錐体細胞と紡錘形の細胞とがある.

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最終更新日 12/04/13

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