Rauber Kopsch Band2. 40

C.中脳Mesencephalon, Mittelhirn

 四丘脳,すなわち中脳は脳の5つの部分の中で最も小さい.背方面でみると,中脳は四丘板の下縁から松果体Corpus pineaieの茎部まで延びており(図428),腹方面では橋の上縁から乳頭体にいたる所までが中脳の範囲である.

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[図418]第三脳室,大脳基底核と脳幹の一部,四丘体,小脳の上面 脳梁膨大を正中面で切断し,大脳半球の後頭葉および側頭葉を取り去り(この取り去つた部分は図423に示してある),第三脳室脈絡組織を取り除いた.

[図419]中脳の横断面.(5/4)

S. 341

 中脳は背側部,中部,腹側部および外側部に分けて考えることができる(図419).その背側部は四丘板Lamina quadrigemina, Vierhügelplatteによって作られ,中部は左と右の被蓋Tegmentum, Haubeからなり,腹側部は左右の大脳脚Crus cerebri, Großhirnschenkelおよび脚間穿孔質Substantia perforata intercruralisよりなり,外側部は左右の下丘腕Brachium colliculi caudalisと上丘腕Brachium colliculi rostralisとからなっている.中脳は縦走する1つの管,すなわち中脳水道Aquaeductus mesencephaliによって貫かれている.

[図420]脳幹と脳神経とを示す.島および前頭葉の一部が残されている. 外側かつ下方からみる.

1. 大脳脚Crura cerebri(図417, 419, 420)

 大脳脚は中脳の腹方部を形成していて,中脳のなかで最も強大な構成要素ということができる.

 左と右の大脳脚は下方は橋および橋腕,上方は視索によって境される.その背方には各側に被蓋Tegmentum, Haubeがあり,被蓋は(黒褐色を呈する)灰白質の大きな板によって大脳脚から隔てられている.この灰白質の板は色素の沈着によって暗い色をした神経細胞よりなっていて,黒核(黒質)Nucleus nigerとよばれる(図419, 469).

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 大脳脚と被蓋とは,外面では溝によってたがいに分けられている.その溝は外側面では中脳外側溝Sulcus lateralis mesencephali(図422),内側面では動眼神経溝Sulcus n. oculomotorii(図410)である.被蓋は背方は四丘板Lamina quadrigeminaによって被われる.

 大脳脚の幅は初めは12~15mmであるが,前方に向かって広くなり18~20mmとなる.大脳脚の全長は10~15mmである.これは視索に達すると,脳の内部に入って見えなくなる.大脳脚は初めはわずか2mmたがいに離れているが,視索の後縁においてはその距離が15mmである.

 左右の大脳脚の内側縁と乳頭体によって三角形の小さいへこみ,すなわち脚間窩Fossa intercruralisが境されている.脚間穿孔質Substantia perforata intercruralisがこの窩の底をなしていて,脚間窩の後部は下陥凹Recessus caudalis,また前部は上陥凹Recessus rostralisと名づけられている(図410).

2. 被蓋Tegmentum, Haube

 被蓋は黒核(黒質)によって大脳脚から隔てられている(図419).その下面の小部分と外側面とは他のものに被われていないで外面にあらわれているが,背側面は四丘板と続いている.四丘板と両側の被蓋とのあいだには中脳水道がある.

 中脳の被蓋はまた橋被蓋Brückenhaubeに対して大脳脚被蓋Hirnschenkelhaubeと呼ばれる.橋被蓋のことを解剖学者は橋背部Pars dorsalis pontisとも呼ぶのである.

3. 四丘板Lamina quadrigemina(視蓋Tectum opticum), Vierhügelplatte(図421, 422, 428)

 四丘板は前髄帆の上端から松果体のつけ根のところまで広がっている.松果体は四丘板の上部のうえで中央にあり,一方,小脳の前方部は両側の下丘を被っている.四丘板という名前は四丘体Corpora quadrigeminaという2対の高まりによるのであって,これらの高まりは上方の比較的低くて大きい方の1対,すなわち上丘Colliculus rostralisと,下方のいっそう強く高まって小さい方の1対,すなわち下丘Colliculus caudalisとである.これらの丘のおのおのがその内部に上丘核Nucleus colliculi rostralisおよび下丘核Nucleus colliculi caudalisをもっている.

4. 四丘腕Brachia corporum quadrigeminorum, Vierhügelarme(図421, 422)

 上丘の外側縁からは上丘腕Brachium colliculi rostralisが出るが,これはくっきりと刻まれた白い髄質で,約2mmの幅をもつ索であり,視床枕Pulvinar thalamiと内側膝状体Corpus geniculatum medialeとのあいだを外側かつ下方に走り,最後に前方に進み,外側膝状体Corpus geniculatum lateraleのあたりに達し,ここで一部は視床に,一部は視索の外側の束に入る.これは約25mmの長さである.

 下丘腕Brachium colliculi caudalisは前者にくらべて,いっそう短くて幅が広く,また比較的平らで且つあまり色が白くない.そして下丘から出て5~8mm走った後に内側膝状体の下にかくれる.内側膝状体を越えるとまた白い条が現われて,これは視索の内側の束に移行している.

 中脳外側溝,下丘腕および結合腕のあいだにある三角形の領域は毛帯三角Trigonum lemnisci, Schleifendreieckと呼ばれる.それはここに,外側毛帯Lemniscus lateralisの外側面と内側毛帯の外側の稜とが毛帯三角の表面のすぐ下にあるからである(図420および422図415と比較せよ).

中脳水道Aquaeductus mesencephali(図410, 419)

 中脳水道は長さ15~20mmあり,上衣によって被われて,第四脳室と第三脳室とのあいだをつなぐ管をなし,間脳の後交連Commissura caudalisの下で第三脳室に開口している.

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中脳水道は,背方は四丘板, 腹方は被蓋により境されている.菱形窩の正中溝は中脳水道に続くのである.

[図421]菱形窩Fossa rhomboidesの表面像 中脳および延髄の背側面.(×2)

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最終更新日 12/04/13

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