Rauber Kopsch Band1. 12

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2.頭の骨格Das Kopfskelet

 頭蓋骨Ossa craniiは脳頭蓋Gehirnschädelすなわち神経頭蓋Neurocraniumの骨と,顔面頭蓋Gesichtsschädelすなわち内臓頭蓋Splanchnocraniumの骨に大きく2分される.あるいは頭蓋函Schädelkapselの骨と,臓弓性骨格Visceralskeletとに分けられるといってもよい.

 骨性頭蓋はその一部が軟骨性にできる置換骨Eratzknochenであり,一部が結合組織性の基盤からできる結合組織骨であることを,発生学が示している.これによって,頭蓋骨は次のように分けられる:

 a)頭蓋函の被蓋骨あるいは不可骨Deck-oder Belegknochen der Schadelkapsel(はじめに軟骨で作られる骨):後頭骨のうち後頭鱗の三角部Schuppendreieck(頭頂間骨Interparietale)を除く部分,翼状突起の内側板を除く蝶形骨,篩骨および鼻甲介,側頭骨の錐体(乳様突起も).

  b)頭蓋函の被蓋骨あるいは付加骨Deck-oder Belegknochen der Schädelkapsel:頭頂間骨,頭頂骨,前頭骨,側頭骨の鱗部,鼓室輪,鋤骨,鼻骨,涙骨

  c)臓弓性骨格の原始骨Primordiale Knochen des Visceralskelets:舌骨,鼓室小骨.

  d)臓弓性骨格の被蓋骨あるいは付加骨Deck-oder Belegknochen des Visceralskelets:上顎骨,口蓋骨,翼状突起の内側板,頬骨,下顎骨.

 狭義の頭蓋函すなわち脳を包んでいる骨の函には,篩骨の大部分,鼻骨,涙骨,下鼻甲介,および鋤骨は与っていない.-原始骨と被蓋骨との境界は以前に考えられていた程はっきりしたものではない.さらにこれら両型の間に,骨化の両様式が一緒にあらわれる,混合骨Mischknochenという第3型があるからである.

a)神経頭蓋の原始骨
α)後頭骨Os occipitale, Hinterhauptbein(図211215)

 後頭骨は頭蓋の下うしろの部分を形成する,菱形に近い強く弯曲した板状の骨で,その前下方の部分は大後頭孔Foramen occipitale magnum, Hinterhauptlochという大きな卵円形の孔で貫かれている.この孔によって頭蓋腔は脊柱管とつながる.大後頭孔の前には短い厚い骨部があって,これを底部Pars basialis(Körper)という.また大後頭孔の両側には結節状の関節突起をもつ部分があって,外側部Partes lateralesという.大後頭孔のうしろにある部分は後頭鱗Squama occipitalis, Schuppeとよばれる.

 は前方と上方へ向かって突出しており,前の方では厚くなっているが後ろの方では薄く鋭い縁をなしている.その外面(下面)の中央に低い高まりがあり,これを咽頭結節Tuberculum pharyngicumという.この結節の両側に,筋肉のするザラザラした場所が左右1つずつる.体の上面は左右が高まってその間のところがすこしへこんでおり,蝶形骨のこれに境を接する部分と一緒に,斜台Clivusという斜めの面をつくっている.凹凸に富む側縁に密接して,錐体溝Sulcus petrosusという細い溝があり,これは下錐体静脈洞の一部を容れるためのものである.鋭い後縁はなめらかな弧をえがいて大後頭孔の前縁をつくっている.体の前面は四辺形の粗面で,蝶形骨の体との接合面をなし,後年にはこれと癒合する.

 外側部はうしろの方で広く薄く,前の方では狭く高い.その外面には,大後頭孔のすぐわきに,関節面をもつ高まりが左右1つずつあり,これを後頭鱗Condylus occipitalisという.左右の後頭鱗の後端を結ぶ線は大後頭孔の真中を通る.関節面は長さが幅ほぼ2倍あり,前後の方向では強く,左右の方向では弱く弯曲した凸面をなし,その面はかなり外側へむいている.左右の関節面の長軸は前方へゆくほどたがいに近づく.

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関節顆のうしろには,それぞれ1つのくぼみがあって,顆窩Fossa condylicaとよばれる.ここには顆管Canalis condylicusという静脈の通る管の後方の口があるが,この開口がいつもあるとは限らない.顆管の前方の口はS状洞溝の中にある.後頭窩の上方には第12脳神経の通る,短い太い管があって,舌下神経管Canalis n. hypoglossiという.外側部の側縁はうしろの部分では厚くて凹凸に富むが,前の方では頚静脈切痕Incisura jugularisによって強くえぐりとられている.頚静脈切痕のところには,前の方に棘が1つ出ていて,側頭骨の同様の棘と向きあい,[頚静脈]孔内突起Processus intrajugularisとよばれる.

[図211]後頭骨 内方から(4/5).

 後頭顆の外側にある骨板はその外面に凹凸があり,あるいは時どき乳突傍突起processus paramastoideusという先の鈍い突起をもっている.他方,その上面すなわち内面には,頚静脈突起Processus jugularisの上部が著しく突起しており,S状洞溝へ向かって落ち込む斜面をなしている.舌下神経管の上方と前方とで,この管の屋根にあたる部分が1つの小高い隆起を作っており,これを頚静脈結節Tuberculum jugulareという.

 後頭鱗の外面にはほぼ中央に,表面のザラザラした高まりがあって,これを外後頭隆起Protuberantia occipitalis externaという.この隆起から下へ大後頭孔の方に向かって,正中部を1本の隆起線が細くなりながら伸びる.これが外後頭稜Crista occipitalis externaであって,外後頭隆起とともに項中隔のの付着するところになっている.外後頭隆起から外側には分界項線Linea nuchalis terminalisが側方へ伸びている.分界項線のさらに上に,細くていっそう強く弯曲した界上項線Linea nuchalis supraterminalisがはっきり認められることがあって,界上項線とのあいだに,左右1つずつ鎌形の領域が囲まれることがある.

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分界項線の下には,これに平行して凹凸のある項平面線Linea nuchalis terminalisが走り,外後頭隆起と十字形に交わっている.分界項線より上のなめらかな領域は後頭平面Planum occipitaleとよばれる.また分界項線より下のさらに大きい領域は多数の項筋の付着するところであって,項平面Planum nuchaleとよばれる.

 後頭鱗の内面には2本の高まりがほぼ直交して走り,それぞれに1本ずつの浅い溝がついている.これは矢状溝Sulcus sagittalisおよび横溝Sulcus transversusとよばれ,静脈洞を境する溝である.これによって4つのくぼみが仕切られることになる.すなわち,上の2つは大脳後頭窩Fossae occipitales cerebralesで,大脳の後頭葉を容れ,下の2つは小脳後頭窩Fossae occipitales cerebellaresで小脳半球を容れるためのものである.また矢状溝と横溝をのせている高まりが,十字に交って突出していることは内後頭隆起Protuberantia occipitalis internaとよばれる.

 大脳後頭窩には後頭部の大脳回によるへこみが見られ,これを脳回圧根Impressiones gyrorumと称し,また大脳の溝に対応する高まりがあって,これを脳隆起Juga cerebraliaという.小脳後頭窩の方にはこれらのものがなく,平滑で,ただ脳硬膜動静脈の溝すなわち動・静脈溝Sulci arteriarum et venarumが通っているだけである.もちろん動・静脈溝は大脳後頭窩にもないわけでない.各後頭窩の深くくぼんだ部分では骨が薄くて,光がすき通る.しかし最もうすい場所は顆窩のところにあるのが普通である.

 左右の小脳後頭窩の間の正中隆起線は広くなって,溝がついていたり,さらには深く凹みをつくっていることさえある.このくぼみ(動物にしばしば見られる)には小脳の下虫の一部が接するので虫窩Fossa vermianaと名づけられている.

 後頭鱗の縁には,次の2つの部分が区別される.その1つは深いギザギザのついた上方の部分であって人字縁Margo lambdoideusとよばれ,頭頂骨との結合部をなす.もう1つはギザギザしているけれども,前者ほどきれこみの多くの下方の部分であって,外側部の側縁につづき,側頭骨の乳突部と結合するので,乳突縁Margo mastoideusという名を得ている.

 分界項線は時どきかなり強い突出部をなし,Torus occipitalis(後頭隆線)という強大な横走する隆起となっていることがある.これがサル類の後頭稜Crista occipitalisに相当する.後頭輪の上方の三角形の部分は,骨発生にあたり前もって膜性に形成される部分で,後頭平面に属し,後頭輪の外側隅で伸びている.この部分が,前もって軟骨性に形成される後頭鱗下部から(横後頭縫合Sutura occipitalis transversaによって)分離しており,そのために頭頂間骨Os interparietaleという骨をつくっていることがある.この骨は古代ペルー人の頭蓋について,Os Incae(インカ骨)として記載されたものである.頭頂間骨は縦走する方法によって左右2つの対称的な部分にわかれることがある.この骨にはさらに他の縫合があらわれることもある(図212, 213).

[図212]頭頂間骨 古代ペルー人の頭蓋. tt:横後頭縫合.

[図213]3分したインカ骨Os Incae tripartiumその中央部がさらに2分している.ドイツ人の頭蓋.

 老人では,環椎の後弓が後頭鱗に圧痕Processus paramastoideus(後頭隆線)という強大な横走する隆起となっていることがある.

 大後頭孔の近くでは後頭骨の外表面が次のような数多くの変異を示す.乳突傍突起Processus paramastoideusが非常に強大で高いことがある.また大後頭孔の前のところに3後頭顆Condylus tertiusとう関節面がみられることが少くない.これは軸椎のし突起の上端が接することころである.さらに頚静脈突起が以上に大きくなっていることもあるし,大後頭孔の辺縁が厚くふくらんでいることもある.舌下神経管は骨質の橋わたしによって2分していることがしばしばある.1つの標本にこれらの変異がすべてがそろって強く形成されるときには,後頭骨は環椎に似た1つの脊椎を浮き彫りされたような様相を呈する.Kollmannはこのような状態を“Manifestation des Occipitalwirbels”(後頭椎の顕現)と充分に区別すべきものは“Assimilation des Atlas”(環椎の同化)である.これは環椎が後頭骨と癒合した状態で,この場合には後頭骨には後頭顆がなくて,環椎の下関節面がみられる.

 Kollmann, Anat. Anz., 3O., Bd.,1907.-Schumacher, Anat. Anz., 31. Bd.,1907.-Koblmüller, Anat. Anz., 71. Bd.,1931.-Ingelmark, Särtryck Nordisk Med.1939.

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[図214]後頭骨の外面(4/5)

       *後頭顆の関節面が2分している(変異).

[図215]側頭骨の後面と,後頭骨のこれに接する部分 後方からみる(4/5).

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β)蝶形骨Os sphenoides, Keilbein (図216218)

 蝶形骨は概して左右の方向に伸びて頭蓋底のほぼ中央に位置している.Corpusと3対の翼すなわち大翼Alae magnae,小翼Alae parvae,および翼状突起Processus pterygoidesからなる.

 にはサイコロの様に6面が区別される.上面の中央部には下垂体窩Fossa hypohyseosという左右に伸びた卵円形の深いくぼみがあって,ここに下垂体がはいっている.下垂体窩とその前およびうしろの部分との形は鞍によく似ているので,この構造全体をトルコ鞍Sella turcica, Türkensattelと呼んでいる.下垂体窩の前上縁には横走する角の鋭い稜があり,これを鞍結節Tuberculum sellaeという.その側方には中鞍突起Processus sellae mediusという小さい突起があり,これはあるかないかの程度のことがしばしばであるが,多少長くなっていることも少なくはない.これらの部分の前にあって横走する,浅いけれども広い溝は視神経溝Sulcus fasciculi opticiであって,視神経管Canalis fasciculi opticiにつづいている.視神経溝の前には蝶形骨平面Planum sphenoideumという平らな場所があって,蝶形骨縁Limbus sphenoideusという低い骨の高まりによって,視神経溝とのあいだの仕切りをされている.下垂体窩をうしろの境するものは,ななめに突出している骨板すなわち鞍背Dorsum sellaeで,そのうしろは斜面をなして斜台Clivusの最上部を形成している鞍背の上の隅には前外側方へ伸びる小さい棘があり,これを鞍背突起Processus dorsi sellaeという.

 体の背面には頚動脈溝Sulcus caroticusという幅の広いS状にまがって溝が,後下方から前上方へ走っており,これは内頚動脈の通るところである.頚動脈溝はその始まりのところで蝶形骨小舌Lingula sphenoideaという内側へそりかえった骨小板によって外側の境をされている.

 体の後面は粗面をなし,ここは若い人では軟骨によって(蝶形後頭軟骨結合Synchondrosis sphenooccipitalis),成人では骨性に後頭骨の体と結合している.

 体の前面と下面:蝶形骨の体には蝶形骨洞Sinus sphenoideiという2つの大きな内腔があり,これは蝶形[]洞中隔Septum sinuum sphenoideorumという1枚の正中部の隔壁によって左右に分けられている.左右の蝶形骨洞はそれぞれ蝶形骨甲介concha ossis sphenoidisとう,上方へ弯曲した三辺形の薄い骨板によって,前下方から部分的にふたをされている.それで蝶形[]洞口Apertura sinus sphenoideiというまるい前方の口が開いたまま残ることになる.蝶形骨洞はこれによって鼻腔に開口するのである.

 蝶形骨洞の大きさの変動する範囲ははなはだ広い.蝶形骨甲介は成人では蝶形骨とかたく結合している.

 体の前面では,蝶形骨洞中隔が蝶形骨稜Crista sphenoideaという稜線をなして骨表面に高まりをなしている.これは下方へ蝶形骨吻Rostrum sphenoideumというトサカのように突出した稜線に移行する.

 体の下面は前面と同じく鼻腔に向かっている.後部では正中部に1本の溝があり,前方では正中部が高くなって突出し,その先は蝶形骨吻に続く.下面の外側部には内側に比あいた溝が左右1本ずつ矢状方向に走っており,鞘状突起Processus vaginalisがこの溝の形成にあずかっている.

 小翼Alae parvaeはほとんど水平に伸びている.体の前上方の隅から2根をもって起こり,この2根の間に視神経管を抱いている.小翼の外側端は細くなってとがっており,大翼が前頭骨と接するところにまで伸びているが,大翼と癒合してはいない.小翼の上面は前頭蓋窩の形成に参加している.下面は上眼窩裂Fissura orbitalis cerebralisと眼窩の最後部との天井をなしている.まっすぐ張った前縁Margo frontalisは薄くてギザギザがあり,前頭骨の眼窩板に接している.後縁は軽く弯入する弧をえがき,自由縁をもって頭蓋腔へ突出し,ここが前後の頭蓋窩の境をなしている.後縁の内側部は肥厚して,とがった自由端をなして後方へ突き出している.これが小翼突起Processus alae parvaeである.

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[図216218]蝶形骨(9/10)

 図216は前から,図217は後から,図218は上から見たところ.

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 大翼Alae magnaeは外側上方へ伸びており,そのいちばん端の点を頭頂角Angulus parietalisという.

 大翼の基部にある前方の管は正円管Canalis rotundusで,前方へ走り,三叉神経の第2枝がこれを通る.大翼の後縁に近い方に,三叉神権の第3枝が通る大きい卵円孔Foramen ovaleがある.さらに後縁のごく近くには棘孔Foramen spinaeがあり,これは中硬膜動脈と,三叉神経第3枝の細い硬膜枝の通るところである.

 大翼には5つの面がある.即ち内面は大脳面Facies cerebralisが1つ,外面は眼窩面Facies orbitalis,[形上]顎面F. sphenomaxillaris,側頭面F. temporalis,および側頭下面F. infratemporalisの4つである.大脳面はへこんでいて,中頭蓋窩の一部をなし,前にも述べた基部の各孔のほかに,浅い脳回圧痕や低い脳隆起があり,さらに前方の部分には中硬膜動脈の前枝のためのかなり大きい溝がみられる.眼窩面は平坦な菱形の面で,眼窩の外側壁の一部をなす.側頭面は5つの面のうちで最も大きく,側頭下稜Crista infratemporalisという隆起線によって,大きい上部と小さい下部とに分かれる.そして後者を時に側頭下面Facies infratemporalisとよぶのである.[形上]顎面は前面の一部で,正円管が開口するところである.

 大翼の縁はやはり3つある.そして3縁とも異なった様相の2つの部分に分けられる.上縁は大翼の基部から一番高い尖端まで伸びている.上縁の内側部は刃物のように鋭くなっていて,上眼窩裂の下縁をなしている.また外側部は広い粗面で,一部は鋸の歯のようなギザギザし,一部はノミの歯のようにとがった接合面で頭頂骨(後で)および前頭骨(前で)と接着し,前頭縁Margo frontalisとよばれる.前縁は上部がギザギザしていて,頬骨と結合する部分で,頬骨縁Margo zygomaticusとよばれ,下部は滑らかで下眼窩裂の上縁をなしている.

 後縁の前部は側頭骨の鱗部と境を接するので,鱗縁Margo squamalisという.この部は前の方では外方に歯のついたノモの形をしており,うしろの方はギザギザした粗面をなしている.後縁の後部はその凹凸に富む外側半で錐体に接し,滑かな内側半で破裂孔Foramen lacerumの縁の一部をつくっている.後縁の前後両部がつくるとがった角の近くに,下面から1本の鋭い突起が下方へ出ている.これを蝶形骨棘Spina ossis sphenoidisという.

 蝶形骨の第3の突起,翼状突起Processus pterygoidesは体および大翼から下方へ伸びている.この突起は外側板Lamina laealisと内側板Lamina medialisという2枚の非常にことなった骨板からなる.これらのうち内側板の方は初めに軟骨性にできる置換骨でなくて,結合組織骨なのである.

 これらの稜骨板のあいだに翼突窩Fossa pterygoideaというへこみが抱かれれる.翼突窩は下方へ伸びて翼突切痕Incisura pterygoideaとなっている.内側板は下端に翼突鈎Hamulus pterygoideusというカギ状の突起をもっている.この突起には翼突鈎溝Sulcus hamuli pterygoideiとう滑らかな溝があって,ここに口蓋帆張筋の腱をうけている.内側板の基部からは1枚の薄い骨板が内側に向かって,蝶形骨体の下面へ伸びている.これがすでに述べた鞘状突起Processus vaginalisである.この突起の自由縁に各側1つずつの鋤骨翼が接して,それによって頭底咽頭管Canalis basipharyngicusという管が囲まれる.鞘状突起の外側に,今まで述べたのとは別の溝あるいは骨の中を通る管がはっきり認められることがあり,これは口蓋骨によっておぎなわれて,咽頭管Canalis pharyngicusをなしている.内側板の基部の後面には内側下方へ傾いた浅いくぼみがあり,これを舟状窩Fossa scaphoidesという.その後外側に耳管溝Sulcus tubae pharyngotympanicaeが長く伸びている.この溝は耳管の軟骨が付着するところである.翼状突起の基部は翼突管Canalis pterygoideusによって矢状方向に貫かれている.翼突管は前方ではロウト状に開き,ここから下方へ翼口蓋溝Sulcus pterygopalatinusという溝に続いている.この溝は口蓋骨と上顎骨とによってかこまれて,翼口蓋管Canalis pterygopalatinusという管になっている.

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 下垂体窩の中でその正中部に(成人では3.0%に)1本の重要な管の上口が認められる.この管は蝶形骨の体を貫いて,その下面で終わっている.これが頭蓋咽頭管Canalis craniopharyngicusで,ヒトでは胎生規の最初の2ヶ月間は必ず存在し,下垂体管Hypophysengangを容れている.しかしやはりここに存在する静脈の通る管と混同してはならない(Sokolow).

 頚動脈溝の終わりの部分は,小翼突起と中鞍突起とを結ぶ骨質の橋わたしによって,内頚動脈の通りぬける孔になっていることが少なくない.この骨質の橋はさらに後方にのびて,鞍背突起にまで達することがある.蝶形骨小舌の対岸にも,同様に弯曲した骨質の小板が内側にあって,そのために頚動脈はここでは骨性の半管で抱かれるのである.-卵円孔と棘孔とは合流していることがあり,また後方へ骨壁が開いていることさえもある.-卵円孔の内側に,かなり大きい静脈孔が大翼の基部を貫いていることがある.-上眼窩裂が大小両翼の結合によって外側で閉じていることは,しばしば見られるのである.

γ)篩骨Os ethmoides, Siebbein (図219221, 226, 268270)

 篩骨は立方体にちかい形の骨で,その大きさのわりには非常に軽い.それはこの骨が薄い骨板の間に多数の空隙が抱かれているからである.篩骨には正中部の垂直な板と,その側方にある2つの部分とが区別され,これらは上方で,フルイのように孔のあいた水平な板でつながり合っている.

 正中部の板すなわち正中板Lamina medianaは鼻中隔の上部をなす.正中板の上縁は,前方でとくに強く高まったトサカの形をなして,頭蓋腔のなかへ突き出ているので,ここを鶏冠Crista galliという(図226).鶏冠の前縁は垂直で,ふつう1本の溝をもち,下端は両側で翼突起Processus alarisという短い突起によって限られている.そして鶏冠の前縁とこの突起とで前頭骨の盲孔にかぶさり,盲孔はかくして形成されるのである.

 篩板Lamina cribriformisは鶏冠の両側にあり,その上に脳の嗅球が乗る.篩板は多数の小孔で貫かれ,ここを嗅糸ならびに前篩骨動静脈および同名神経が通りぬける.

 左右の側部すなわち篩骨迷路Labyrinthi ossis ethmoidisには壁のうすいかなり多数の空所がかこまれており,これを篩骨洞Sinus ethmoideiとよぶ.篩骨洞は前篩骨洞後篩骨洞Sinus ethmoidei aneriores et posterioresにわけられる.

 左右各々の篩骨迷路の外側面はその一部が薄い滑らかな骨板で被われており,これ眼窩板Lamina orbitalisまたは紙様板Lamina papyracesという.しかし篩骨迷路は前方では紙様板で被われていないので,,ここでは涙骨と上顎骨の前頭突起とに被われる.篩骨迷路の前下方部からサーベル形に弯曲した長くて薄い骨板が伸びている.これが鈎状突起Processus uncinatusで,後下方へ伸びて上顎洞への入り口を一部閉ざしている.またその後下端は下鼻甲介の篩骨突起に達して,しばしばこれと骨性に結合している(図270).

 篩骨迷路の内側面は鼻腔の外側壁の形成にあずかっている.この面は何本かの溝のある,デコボコした薄い骨板からなり,上方では篩板につながって,嗅糸とその枝の通る多数の管や溝をもっている.この面のうしろ半分には1本の深い溝がある.これが上鼻道Meatus nasi superior, oberer Nasengangで,ここに後篩骨洞が開口する.この溝の上へ突きだしている低い骨稜は上鼻甲介Concha nasalis media, mittlre Muschelで,その自由縁は角ばった曲がりの1線を描いている.中鼻甲介Meatus nasi medius, mittlerer Nasengangの天井をなしている.中鼻道の前方の部分から篩骨漏斗Infundibulum ethmoideumというロウト状の道が,鈎状突起と篩骨胞の間を経て,上顎洞および(50%において)前頭洞に通じている.

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[図219221]篩骨(9/10)

図219は左側から,図220は後上方から,図221は前方から見たところ.

[図222, 223]左の下鼻甲介(9/10)図222は内側面,図223は外側面.

[図224, 225]新生児の右の側頭骨(1/1)顔面神経管の中にゾンデが入れてある.図224は外方から,図225は内方から見る.

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 篩骨漏斗が鼻腔へ開口する部分を半月裂孔Hiatus semilunarisという.さらに前篩骨洞もここに開く.

 しばしば上鼻甲介のさらに上でうしろの方に小さい甲介があって,これを最上鼻甲介Concha nasalis supremaちう.1個の骨として分離された篩骨では,環状に並んだ篩骨洞の全体が外へ開いている.つまり,眼窩板(紙様板)が蓋をしていないところでは,篩骨以外の頭蓋骨が篩骨洞の蓋をしているのである.われわれは前篩骨洞と後篩骨洞とを区別しているが,前篩骨洞は中鼻道に開くもの,後篩骨洞は上鼻道に開口するものをいうのである.位置と大きさのために前篩骨洞の中でも特別扱いにされている篩骨胞Bulla ethmoideaは,鈎状突起の後稜に向かい合っている.

 眼窩板(紙様板)の上縁には2つの溝があって,前頭骨とともに眼窩頭蓋管Canalis orbitoethmoideusと眼窩篩骨管Canalis orbitoethmoideusをつくっている.そしてこれらの管が眼窩へ開くところを篩骨孔Foramina ethmoideaとよぶ.

[図226]鼻中隔(4/5)青は軟骨の部分

δ)下鼻甲介Concha nasalis inferior, untere Muschel (図222, 223, 268270)

 下鼻甲介は1対のさらのような形の骨で,その上縁で鼻腔の外側壁にくっつき,鼻腔の中に突きだして中鼻道と下鼻道とに分けている.そのふくらんだ面は内側に向かっている.また下縁は自由縁をなし,いくらか巻きこんで,厚くなっている.

 下鼻甲介の上縁は前方で上顎骨の前頭突起の鼻[甲]介稜にくっつき,なお上の方へ涙骨と接する涙骨突起Processus lacrimalisという小さい骨板を出している.さらに後方にはもう1つ外方へ弯曲して,下方へ向かう突起がある,これが上顎突起Processus maxillarisで,上顎洞の開口の下縁にはまりこんで,上顎洞の内面からの閉鎖を完全にしている.最後に第3の突起,篩骨突起Processus ethmoideusが,これまた上方へ伸び足して,篩骨の鈎状突起に接する.下鼻甲介の後端は突出し,口蓋骨の鼻甲介稜に付着している.

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ε)側頭骨Os temporale, Schlafenbein (図215, 224, 225, 227233)

 側頭骨は頭蓋の底と側壁の形成に与り,後頭骨・蝶形骨・頭頂骨のあいだの間隙をふさぎ,また聴覚器の最も重要な部分を蔵している.側頭骨は錐体乳突部・舌骨部・鼓室部・鱗部の4部分からなる.

錐体乳突部Pars petromastoidea(錐体部と乳突部)および舌骨部Pars hyoidea

 錐体部(岩様部)Pars petrosaすなわち錐体Pyramisを横たわる角錐と見れば,その底は乳頭物で形成され,その縦軸は前内側にむいている.

 前面は錐体の大脳面Facies cerebralis (anterior interna) pyramidisである.その側頭鱗との境は錐体鱗裂Fissura peterosquamalisであるが,これは若い人にしかはっきりみられない(図225).大脳面は少し前方へ傾斜していて,中頭蓋窩の一部をなし,またいろいろ特異な点を示す.錐体の尖端の近くにある浅いくぼみは三叉神経圧痕Impressio trigeminiとよばれ,三叉神経の根と半月神経節がそこにあったことを示している.大浅錐体神経溝Sulcus nervi petrosi superficialis majoisという細い溝が三叉神経圧痕から外側へ向かって伸び,顔面神経管裂溝Hiatus canalis nervi facialisという小さい門に至っている.この裂溝は錐体の内部にある顔面神経管に通じるものである.その外側方に,あるいは大浅錐体神経溝の終わりの部分に,小さい小浅錐体神経小管の内口Apertura interna canaliuli n. petrosi superficialis minorisがあり,大錐体神経校に平行するごく細い小浅錐体神経溝Sulcus n. petrosi superficialis minorisがそこに達していることがしばしばである.さらに後外側方には,まるみのある高まりの弓状隆起Eminentia arcuataがあって,聴覚器の迷路に属する上半規管Canalis semicircularis superiorの位置を示している.この隆起と錐体鱗裂との間の領域は鼓室の屋根をなす薄い骨板で占められており,これを鼓室蓋Tegmen tympaniという.後面は錐体の小脳面Facies cerebellaris (posterior interna) pyramidisとよばれ,上内側方へ向かっており,後頭蓋窩の形成に参加している.この面のほぼ中央に内耳孔Porus acusticus internusがあって,これは短くて広い内耳道meatus acusticus internusに通じている.この道の底は内耳道底Fundus meatus acustici interniとよばれ,ここに横稜Crista transversa(図227)という1本の横走する隆起の上側に,顔面神経管口Introitus canalis n. facialisがひらいている.

[図227]内耳道底(×5) 左の側頭骨

 内耳孔の外側には錐体稜の近くに弓状下裂孔Hiatus subarcuatusがあり,そこは新生児では弓状下窩Fossa subarcuataというくぼみになっている(図225).さらに下方,内耳道から外側へほぼ水平方向に8mmへだたったところに,重要な裂隙状の前庭小管内口Apertura interna canalilculi vestibuliがあって,下外側方へ向かって開いている.

 錐体部の下面(図230)は錐体頭底面Facies basialis pyramidisとよばれ,茎状突起Processus styloidesとともに側頭骨の舌骨部Pars hyoideaをなす.茎状突起は茎状突起鞘(半鞘)Vagina (Semivagina) processus styloidisで基部をとり巻かれている.そのうしろには顔面神経管の外口があり,これを茎乳突孔Foramen stylomastoideumという.その内側には頚静脈窩Fossa jugularisがある.頚静脈窩は錐体の後縁にぎりぎりに密接しているので,後縁に頚静脈切痕Incisura jugularisという切れ込みをつくっている.

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頚静脈窩のなかには乳突小管溝Sulcus canaliculi mastoideiとう溝が走っており,そこに乳突小管Canaliculus mastoideusという,迷走神経耳介枝のためめの管の入口がある.だらにその前前方で少し内側に頚動脈管の外口Apertura externa canalis coroticiがあって,内頚動脈などを頭蓋腔に導き入れる頚動脈管Canalis caroticusへの入口になっている.また頚動脈管の内口Apertura interna canalis caroticiは斜めに切り落とされた形で,錐体部の前稜の錐体尖の近くにある(図231).

 頚静脈窩と頚動脈管の外口との間には,浅い錐体小窩Fossula petrosaがあって,これが鼓室小管Canaliculus tympanicusであって,その下方へ開く口は容易に認められ,鼓室小管の外口Apertura externa canaliculi tympaniciという.錐体小窩とならんでその内側に,頚静脈窩の前に三角形のくぼみがあって,その底には蝸牛小管Canaliculus cochleaeが開口し,そこを蝸牛小管の外口apertura externa canaliculi chochleaeという.

 錐体の大脳面と小脳面とが合するところは,錐体稜Crista pyramidisとい鋭い稜線をなしている.この稜線の上には錐体稜溝Sulcus cristae pyramidisとう溝が走っている(図229).この溝は上錐体静脈洞を容れるためのもので,外側へ進んで乳突部の大きなS状洞溝Sulcus sigmoidesに達する.小脳面の下縁をなす稜は,その下面にやはり溝をもっており,これは錐体溝Sulcus petrosusとよばれる.この稜には頚静脈切痕Incisura jugularisがあって,ここにはしばしば[頚静脈]孔内突起Processus intrajugularisが見られる.(図215).錐体の尖端すなわち錐体尖Apex pyramidisには頚動脈管の内口があり,この間の外側壁には筋管総管Canalis musculotubalisの開口がある.この筋管総管の中をのぞいてみると(図231),筋管総管中隔Septum canalis musculotubalisというかなり幅のある骨の小板が水平に伸びてこの管を2つに分けている.すなわち上の方のは鼓膜張筋を容れるための鼓膜張筋半管semicanalis musculi tensoris tympaniで,下の方のは耳管骨部の通る耳管半管Semicanalis tubae pharyngotympanicaeである.前稜には錐体鱗裂Fissura petrosquamalisと錐体鼓室裂fissura petrotymanicaがある(図228).

 外側面すなわち錐体の鼓室面Facies tympanica pyramidisは鼓室の内側壁を形成する.これについては聴覚器の項で述べることにする.

 頚静脈窩の深さは非常にまちまちである.これはそのがわの横溝およびS状洞溝がどの程度強く形成されているかに左右される.(横溝とS状洞溝はふつう右の方が大きいが,左の方が大きいこともある.)全く浅い頚静脈窩があるかと思うと,極度に深くなって,その壁が中耳の中に丸くふくれて突出していることもある.

 乳頭小管Canaliculus mastoideusの存否および位置の変位が数多く見られることは,新生児ではまだ迷走神経の耳介枝が骨の外にあって,後になって初めて骨質にとり囲まれるという事実から説明される(Frohse).側頭骨の錐体尖から鞍背の外側稜へ蝶形錐体靱帯Lig. sphenopetrosumが張っている.これについてはVoit(Anat. Anz., 52. Bd. )およびWegner (Anat. Anz., 53. Bd. )がかなりくわしく記載している.

 乳突部Pars mastoideaの外面はいくつもの筋が付着するために,その大部分が粗面をなしており,外耳孔のうしろで下方へ伸びだして乳様突起Processus mastoidesとよばれる乳頭状の突起をなしている(図228).後頭骨と結合する縁は後頭縁Margo occipitalisという.

 乳様突起は内側面では乳突切痕Incisura mastoideaによって深く切れ込んで,その中から顎二腹筋の後腹が起こる.その内側には後頭動脈溝Sulcus arteriae occipitalisがある.乳突部の内面には深いS状洞溝Sulcus sigmoidesがみられ,これは乳突部が錐体部と合する角の中を走って,脳硬膜のS状静脈洞を容れる溝の一部をなしている.大きさと数の一定しない導出静脈が,ふつう乳突部の後縁の近くで骨を貫いてS状洞溝に開口する.これを乳突孔Foramen mastoideumという.乳突孔は時どき咬頭乳突縫合に開口している.乳突部の上縁と鱗部の上縁とは,頭頂切痕Incisura parietalisという切れ込みによって分かれている(図228, 229).

S.160

[図228]左の側頭骨 外方からみる(1/1)

*は鱗乳突縫合のなごりで,必ずしも存在するものではない.

[図229]左の側頭骨 内方から見る(1/1)

S.161

[図230]左の側頭骨 下から見る(1/1)

*後頭骨の頚静脈突起と結合する面.

[図231]左の側頭骨 前から見る(1/1)

 乳突部の中には乳突洞Antrum mastoideumという鼓室に通じる空洞があり,その続きは小腔洞が見事な扇状の集団をなして乳突蜂巣Cellulae mastoideaeとなっている.乳突蜂巣は本質的には篩骨洞と全く一致するものである(図232, 233).乳突蜂巣の発達の程度は実にさまざまである(Silbiger, H., Acta anat.11. Bd.,1950)

錐体部の諸管

1. 錐体部の管の内で最も太いのは頚動脈管Canalis caroticusである(図230, 231).

S.162

この管は錐体の下面の中央で頚動脈管の外口にはじまり,初めはかなり垂直にのぼてって,中耳の前壁の大きい部分を形成し,それから迷路の蝸牛の下で前内側方へ向かってほとんど直角に曲がり,軽い登り坂をなして,錐体尖で内口に終わる.錐体尖のところでは,頚動脈管の上壁は不完全にできていることが多い.頚動脈管からごく細い2本の頚鼓水管Canaliculi caroticotympaniciが鼓室に通じている.

2. 顔面神経管Canalis n. facialisは内耳道底の上部にはじまり(図227),ほとんどまっすぐに前方へ顔面神経管裂孔Hiatus canalis n. facialisにむかい,それから鋭い角をなして後外側方へ折れまがって,ここに顔面神経管膝Geniculum canalis n. facialisを形成する.それから鼓室と外側骨半規管の露出部との間に位置を占めながら,鼓室の前庭窓の上を通過し,外側半規管の下でふたたび今度はゆるいカーブで,下方へ向きを変え,茎乳突孔Foamen stylomastoideumに終わるのである(図233).このカーブの下で,鼓室の錐体隆起eminentia pyramidalisが,顔面神経管の壁につづいている.顔面神経管は茎乳突孔に開くすぐてまえで鼓索神経小管Canaliculus chordae tympaniとう重要な管を出す.この管は前上方へ伸びて鼓室溝の後縁にごく近いところで鼓室に開口する.

 顔面神経管の下部は乳突小管Canaliculus chordae tympaniと交叉している.この管は頚静脈窩にはじまって鼓室乳突裂に終わるものである.

 つまり顔面神経管の全経路は3つの部分にわかれるのである.膝に至るまでが第1の部分で,蝸牛と前庭との間で,それらの少し上方に位置している.第2の部分は中耳にあって,その位置は前庭窓と外側骨半規管の露出部によって定まっている.第3の部分は鼓室の後壁から1~2mmはなれて,それに平行して,ほとんど垂直に下方へ走っている.

3. 鼓室小管Canaliculus tympanicusは錐体小窩のなかで鼓室小管の外口Apertura externa canaliculi tympaniciにはじまる.そして鼓室の下壁を貫いて,鼓室小管の鼓室口Apertura typanica canaliculi tympaniciをもって鼓室に開く.それから先は鼓室の内側壁にある岬角溝Sulcus promunturiiを通って上方へむかい,鼓室の上壁にある小浅錐体神経小管の鼓室口Apertura tympanica canaliculi n. petrosi superficialis minorisにいたる.小浅錐体神経小管Canaliculus n. petrosi superficialis minorisは鼓室の上壁を貫いて,顔面神経管裂孔の外側で,錐体の大脳面に開く.この開口が小浅錐体小管の内口Apertura interna canaliculi n. petrosi superficialis minorisである.

4. 頚動脈管の上部と平行に,その外側壁に接して筋管総管Canalis musculotubalisが走っている.その上半部が鼓膜張筋半管Semicanalis m. tensoris tympaniであって,下半の広い方の部分が耳管半管Semicanalis tubae pharyngotympanicaeである.両管ともに後外側方へ伸びて,鼓室の前壁に開口する(図232).

5. 前庭小管Canaliculus vestibuliは迷路の前庭に前庭小管の前庭口Apertura vestibularis canaliculi vestibuliではじまり,錐体の大脳面で前庭小管の内口Apertura interna canaliculi vestibuli(図229)をもって開口する.

6. 蝸牛小管Canaliclus cochlearは迷路の前庭に蝸牛小管の迷路口Apertura labyrinthica canaliculi cochleaeをもってはじまり,錐体の頭底面で蝸牛小管の外口Apertura externa canaliculi cochleaeとなって終わる.

 頚静脈孔内突起の前にある切れ込みと,そこから出て錐体部の下面に伸びる溝とが(4%において)管をなしていることがある.これが“Canalis glossopharyngei”(舌咽神経管) (v. Hayek1929)とよばれるもので,その中を舌咽神経が通る.

鼓室部Pars tympanica

 鼓室部は外耳道Meatus acusticus externusの底と側壁とをなしている.鼓室部の自由縁(外側縁)は側頭鱗とともに骨外耳孔Poorus acusticus externus osseusを囲んでいる.

S.163

[図232]中耳(左)の内側壁とこれに続く上・下・後壁の部分 ×1.5

[図233]顔面神経管の経路 図232と同じ標本で,薄い骨層を除去して示す×1.5

S.164

上縁は巻きこんだようになっていて,外側でその上へ側頭鱗の一部が突き出ており,それと鼓室部との間に鼓室蓋稜Crista tegmentalisという骨質の堤がはさまれている.こうして錐体鼓室裂Fissura petrotympanicaと錐体鱗裂Fissura petrosquamalisという2つの裂隙が生じるのである(図228).そのうち錐体鼓室裂の方が重要なもので,鼓室に通じて鼓索神経Chorda tympaniを通しており,さらにツチ骨の長突起とツチ骨長突起靱帯とを容れている.これと反対側にある鼓室部の骨板の下縁は鋭い稜線をなして鼓室稜Crista tympanicaとよばれ,その内側面に茎状突起の基部が接している.鼓室部と乳突部との境には鼓室乳突裂Fissura tympanomastoideaがあり,その中に乳突小管Canaliculus mastoideusの外口が開いている.鼓室部の内面は凹面をなし,その奥に鼓膜のつく鼓室溝Sulcus tympanicusというきれいな溝がある.新生児では外耳道がなく,鼓室部は鼓室輪Anulus tympanicusという弓状の骨部をなしている.その前端は大鼓室棘Sina tympanica major,後端は小鼓室棘Spina tympanica minorとよばえ,それぞれ自由端をなして側頭鱗の下縁に接し,両端の間に側頭鱗の鼓室切痕Incisura tympanicaを残している(図224).

鱗部Pars squamalis

 側頭鱗Squama temporalisは凹の内面をもつ円板状の骨板であって,側頭面Facies temporalisおよび大脳面Facies cerebralisの2面が区別される.側頭鱗は頭蓋の側壁を,頭頂骨と蝶形骨のあいだで補っている.そしてこれらの骨と結合するところが頭頂縁Margo parietalisと蝶形縁Margo sphenoideusである.

 側頭鱗の縁の大部分は内面をそがれて鋭いへりをなしているので,内面より外面の方がかなり広くなっている.蝶形骨の大翼に接する蝶形縁だけが鋸歯状の縁をなしている.内面すなわち大脳面Facies cerebralisには脳回圧痕Impressiones gyrorumや脳隆起Juga cerebraliaがあり,また縁の前部と平行して中硬膜動脈のための溝がある.外面すなわち側頭面Facies temporalisはその上部がやや弯曲しており,側頭筋がここで起こるために粗面をなし,外耳孔の近くには上行する血管溝があって,これを中側頭動脈溝Sulcus arteriae temporalis mediaeとう.側頭面は側頭窩の壁の一部をなしている.前方へ1本の長い突起が伸び,これを頬骨突起Processus zygomaticus, Jochfortsatzという.この突起はねもとのところでは幅広くて,上下の両面をもっているが,それより先の方では細くなり,その上ねじれて内側面と外側面および上稜と下稜がはっきりしてくる.上稜は鋭くて,最も前方まで突き出ている.前端は斜めになってギザギザがあり,頬骨と結合している.頬骨突起は後方へ,臨床上重要な側頭線Linea temporalisに移行している.その下には外耳孔の後上隅に,[外耳]道上棘Spina supra meatumが80%において存在する.

 下方から観察すると,頬骨突起の基部に関節結節Tuberculum articulareがみられる.関節結節のうしろに続いて,左右の方向にのびた卵円形のくぼみがある.これが下顎骨に対する関節窩で,下顎窩Fossa mandibularisとよばれ,これをおおう軟骨は関節結節の表面に直接つづき,こうして1つの丘稜状の関節面がつくられている.この関節窩のうしろにつづいて関節後突起Procewssus retroarticularisという高まりがあるが,これは通常低くて,個人によって発達の程度を異にしている.さらにそのうしろに,外耳道と関係してその天井をなす,側頭鱗の重要な部分が続いている.この部分は下顎窩と同様にへこんでいて,奥の方へ(鼓室へ向かって)では,鼓室切痕Incisura tympanicaをなす縁に終わっている.

 側頭鱗には前上方に1つの突起が出て,前頭骨に達し(側頭鱗の前頭突起Processus frontalis squamae temporalis),蝶形骨の大翼を頭頂骨からおし隔てていることがある.この突起は高等人種よりも下等人種に多くあらわれる.

S.165

b)神経頭蓋の付加骨(被蓋骨)
α)頭頂骨Os parietale, Scheitelbein(図234, 235)

 頭頂骨は外面が凸,内面が凹の四辺形の板をなしている.頭頂骨は頭蓋冠の大きい一部を形成し,後頭骨・前頭骨・側頭骨・蝶形骨のあいだにはまりこんでいる.上縁すなわち矢状縁Margo sagittalis,前縁すなわち前頭縁Margo frontalis,および後縁すなわち後頭縁Margo occipitalisはみなギザギザしているが,中でも後頭縁はそれが最もはげしい.前縁すなわち前頭縁は上の方では前頭骨が少しかぶさって来ているが,下の方では逆に頭頂骨じしんが前頭骨の後縁にかぶさっている.下縁すなわち鱗状縫合Margo squamalisは外面をそがれて鋭い縁をなしており,側頭骨の鱗部に接している.4つの角は前頭角Angulus frontalis,蝶形角Angulus sphenoideus,後頭角Angulus occipitalis,および乳突角Angulus mastoideusである.そのうち蝶形角が最もとがっており,乳突角が最も鈍い.

 頭頂骨の上縁の近くで後頭角に寄って頭頂孔Foramen parietaleが見られる.ここを頭頂導出静脈Emissarium parietaleが通る.

 外面すなわち頭頂面Facies parietalisでもっとも突出した部分は頭頂結節Tuber parietaleとよばれる.この結節の下に,前からうしろへ低い弓状の隆起線が走っている.これが側頭線Linea temporalisで,前頭骨から頭頂骨へ続いているものである.さらにその上方で,あるいは近く,あるいはかなり離れて,同じ方向に走るもう1本の隆起線がある.これは側頭線よりもずっとはっきりしないことが多く,筋膜側頭線Linea temporalis fascialisと呼ばれるものである(図234).この2本の線で囲まれる帯状の部分は平滑なことが目立っている.

 内面すなわち大脳面Facies cerebralisには脳回圧痕や脳隆起が見られる.また枝分かれした動静脈溝Sulci arteriarum et venarumがみとめられるが,これは中硬膜動脈とその伴行静脈の前枝および後枝の経路にあたる溝である.上縁に沿って浅くて幅の広い矢状溝Sulcus sagittalisがある.これは溝の半分をなすだけで,対側の頭頂骨の同じ溝と一緒になって初めて完全な溝となるのである.うしろ下の角(乳突角)には浅いへこみのあることが多い.これは横溝Sulcus transversusの一部をなすもので,横溝が後頭骨から側頭骨へ移行するところに当たっている.たいていの頭頂骨では上縁の近くに多数の小さいくぼみがある.ここには脳クモ膜の絨毛(脳膜顆粒)がはいっているので,脳膜顆粒小窩Foveolae granularesまたはパッキオニ小窩Pacchionische Grübchenとよばれる.

β)前頭骨Os frontale, Stirubein(図236238)

 前頭骨は頭の円蓋の前方の部分をなし,前頭鱗Squama frontalisという上方へ伸びた1つの円蓋状の部分と,眼窩の天井のほとんど全部をなして眼窩部Partes orbitalesとよばれる2つの水平な部分と,両眼窩部のあいだにある鼻部Pars nasalisとからできている.

 前頭鱗には前頭面Facies frontalisと,側面の小さい側頭面と,内面すなわち大脳面Facies cerebralisとが区別される.

 額のところに両側に前頭結節Tubera frontalis, Stirnhöckerが出ている.この高まりは浅いへこみによって,眉弓rcus superciliaris, Augenbrauenbogenという弓なりの隆起から隔てられている.左右の眉弓のあいだには,比較的平らなところがあって,これを眉間Glabella, Stirnglatzeとう.眼窩の縁は眼窩縁Margo orbitalisとよばれ,外側で最も鋭く,もっとも突出している.眼窩縁の内側3分の1のあたりに1つの切痕ないしは溝があって,これを外側前頭切痕()Incisura frontalis lateralis (Foramen frontale lateralという.この内側には内側前頭切痕Incisura frontalis medialisという溝がある.これは時どき内側前頭孔Foramen frontale medialeという孔になっている.眼窩縁は外側で太いがっちりした突起となって伸びだしている.これは頬骨と結合するので頬骨突起Processus zygomaticus, Jochfortsatzと名づけられている.

S.166

[図234]左の頭頂骨 頭頂面(4/5)

[図235]左の頭頂骨 大脳面(4/5)

S.167

 頬骨突起の外方部から側頭線Linea temporalisがはじまって上後方へ弓状に走り,二叉に分かれて頭頂骨へ続いている.

 前頭部の大脳面Facies cerebralisは凹面をなし,脳回圧痕や脳隆起がみられる.その上部中央には矢状溝Sulcus sagittalisという溝が走る.その左右両縁は下方で1本になって稜線をなしてたかまり,これを前頭稜Crista frontalisという.前頭稜は篩骨切痕の近くにまで達するが,ここで2つの小さい接合面に席をゆずっている.この面は篩骨の翼突起と接してこれとともにも盲孔Foramen caecumをかこむためのもである.しかし盲孔が全く前頭骨だけでできていることもある.盲孔は導出静脈の通る孔ではなくて,硬膜の1突起を容れるものなのであるが,前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis(後述)のあたりにまで伸びて,そこでゆきづまりになっている.矢状溝のそばにやはり脳膜顆粒小窩があり,さらに動静脈溝も存在する.前頭骨の後縁はギザギザしており,左右の頭頂骨との結合面をなすので頭頂縁Margo parietalisと名づけられている.頭頂縁は外側で眼窩部の蝶形[]Margo sphenoideusにひとつづきに移行している.

 眼窩部はほぼ三角形である.内側縁と後縁とは直線をなし,外側縁は弓なりにまがって,いずれも前から後ろへ走っている.

 眼窩面Facies orbitalisは凹面をなしており,頬骨突起のすぐそばに涙腺の眼窩部を容れる涙腺窩Fossa glandulae lacrimalisというくぼみがある.眼窩面の前内側部には,小さいくぼみないし凹凸,あるいは小窩のわきに小さい棘があって,これを滑車小窩Foveola trachlearisおよび滑車棘Spina trochlearisという.滑車棘は上斜筋の滑車が付着するところである.眼窩部の大脳面は円くたかまっていて,脳隆起と脳回圧痕が強くあらわれており,前面および外側へはっきりした境なしに前頭鱗の大脳面に移行している.ギザギザした後縁は蝶形縁Margo sphenoideusとよばれ,蝶形骨の大小両翼の付着するところである.左右の内側縁はその前方にある鼻部とともに篩骨切痕Incisura ethmoidea, Siebbeinausschnittを成し,ここに篩板がはまりこむ.鼻部は前の方に1本のとげのような突起が出ていて,これを前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis, Nasenfortsatzという.鼻棘は重複していることもある.その前面はザラザラしていて,鼻骨と,上顎骨の前頭突起の一部とがここに接する.

 鼻棘の後面には篩骨の正中板の前縁がささえられているが,時にまた篩骨洞の前方のものもここに付着する.鼻棘の上をおおって鼻縁Margo nasalisというギザギザした半月形の面があり,ここに鼻骨の上端と上顎骨の前頭突起の上端が接する.この上顎骨の付着する所のうしろで鼻部の面は深く落ち込んでいて,多少とも著明な空所がそこにある.これが前頭洞Sinus fronalisで,前頭洞口Apertura sinus fronalisによって鼻腔に開口する.

 左右の前頭洞は,前頭洞中隔Septum sinuum fronaliumという,多くの倍薄い隔壁でわけられており,その形と広さとは同一の頭蓋においてすらもずいぶん異なっている.この中隔はどちらか1側へおしやられていることも,斜めになっていることもあるが,その下端部は常に正中線上にある.

 さらに後方の前頭骨の部分は,くぼみの多い,小室に分かれた様相を示しており,それが前頭洞の入口に近づくほど著しくなるので,前頭洞そのものがこのような小室の大きくなったものとみなされるのである.

 前頭洞と関係しているほかの骨については,まず左右の篩骨迷路を挙げねばならない.篩骨迷路の天井は眼窩部の内側部でつくられている.次には篩骨の眼窩板(紙様板)と上顎骨の前頭突起との間にはさまっている涙骨が挙げられる.眼窩板と結合している部分には各篩骨洞の頂の部分を成す篩骨小窩Foveolae ethmoideaeがならんでいる.なおここには2つの切痕があって,眼窩板の接着によってそれぞれ孔になっている.

S.168

すなわち前の大きい方の切痕は眼窩頭蓋管Canalis orbitocranialisとなり,うしろの小さい方の切痕は眼窩篩骨管Canalis orbitoethmoideusとなるのである.あるいはこれら両管が,前頭骨だけ,またはいっそうまれに眼窩板だけによって形成されていることもある.

 縫合の痕跡が鼻縁から正中線上を上方へ伸びていることがある(図273).それはっこの骨が左右の両側半から生じたことを示すものである.前頭縫合Sutura frontalisがいつまでも存続する例も少ない.

 前頭洞の大きさは非常にまちまである.小さくて,やっとエンドウ豆ほどの大きさのが在るかと思えば,はなはだよく発達して前頭鱗や眼窩部にまで伸びていることにもある.眼窩部へ伸びている場合,それが異常に発達している例では蝶形骨の小翼,さらには大翼の中にまで達することがある.こうなると前頭洞が眼窩の上壁全体と側壁の一部にわたって位置を占めることになる.

γ)鼻骨Os nasale, Nasenbein(図239, 240, 268270)

 鼻骨は鼻腔の上前部の壁の一部を成している.上の方では厚くて狭いが,下の方ではかなり広く薄くなっている.

 鼻骨の上縁は前頭骨と結合するために強くギザギザがついている.

 鼻骨の上縁は前頭骨と結合するために強くギザギザがついている.下縁はとがった縁をなし,多少とも深いきれこみが1つ,内側縁よりに認められることが多い.外

側縁は上顎骨の前頭突起と結合し,内側縁は他側の鼻骨と結合している.前面は上部でややへこんでいるほかは凸面をなしている.後面には前篩骨神経の1枝のために篩骨溝Sulcus ethmoideusという1本の溝がある.この溝から骨を貫いて前面へ,鼻骨孔Foranlen nasaleという小さい孔が開いている.

 左右の鼻骨はしばしば不同である.まれには左右の鼻骨の下縁が前方で合する角のところに鼻間骨Ossa internasaliaという独立した骨がみられる.

δ)涙骨Os lacrimale, Tränenbein(図243, 268270)

 涙骨はうすい板状の骨で,前方は眼窩の内側壁で紙様板と上顎骨の前頭突起とのあいだにあり,上方は前頭骨に達し,下方は上顎骨の眼窩面に達している.

 外面は眼窩に面しており,前の方に1本の縦の流が垂直方向に走っている.これが涙嚢溝Sulcus lacrimalisで,上顎骨の前頭突起の回名流とともに涙嚢窩Fossa sacci lacrimalisという涙嚢を容れる長細いくぼみをつくる.涙嚢溝はそれよりうしろの眼窩面の部分からは1本の鋭い稜線でしきられている.これが後涙嚢稜Crista lacrimalis posteriorで,下方へ伸びて涙骨鈎Hamulus lacrimalisという,他方ヘカギ状にまがった突起に続いている.涙骨鈎は上顎骨の前頭突起の前涙嚢稜に接続している.涙骨の下縁の前部は上顎骨に接し,また下鼻甲介の涙骨突起とも結合している.涙骨の内面は前篩骨洞に外方からふたをして,それによって紙様板をおぎなっている.また涙骨の内面は下方で中鼻道に面している.

ε)鋤骨vomer,Pflugscharbein(図226, 241, 242, 272, 275)

 鋤骨は不対性で,うすい不等辺四角形の骨板である.左右の鼻腔の間で垂直に立っている.この垂直な部分は正中面にあるとはいうものの,やはりどちらか1側にまがっていることがしばしばである.この垂直板は上方で中央の溝によって左右1枚ずつの鋤骨翼Alaevornerisに分れている.

S.169

[図236]前頭骨 前頭面(4/5)

[図237]前頭骨 大脳面(4/5)

S.170

[図238]前頭骨 眼窩面(4/5)

[図239, 240]左の鼻骨(1/1)図239は外方から,図240は内方からみる.

[図241, 242]鋤骨(1/1)図241は上稜からみる.図242は左側からみる.

[図243]左の涙骨 外方からみる.(1/1)

 この中央の溝に蝶形骨吻Rostrum sphenoideumがはまりこんでいる.鋤骨異は蝶形骨体の下面のかなり広い部分を包んでおり,前方では蝶形骨甲介に達し,側方では蝶形骨の異状突起の基部にある鞘状突起に達している,口蓋骨の蝶形骨突起も鋤骨翼と結合している.鋤骨の前縁は上方の小さい部分で篩骨の正中板に結合し,下方の大きい部分で鼻中隔の軟骨と結合している,また下縁は鈍い刃をなして上顎骨および口蓋骨の鼻稜Crista nasalisに接着している.後縁はうすくて平滑で自由縁をなし,左右の鼻腔のうしろの口すなわち後鼻孔Choanaeのしきりをなしている.鋤骨の両面にはそれぞれ1本の溝がななめに後上方から前下方へ走っている.これは鼻口蓋神経N. nasopalatinusの経路にあたる.

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最終更新日 12/04/13

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